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今夜パパに内緒で#5 シゴデキ会社員(奇妙礼太郎/エロい関係)
お世話になっております。日比野めんちと申します。
ゴールデンウィークも働き詰めで、疲れちゃいました。
私はいま、人を育てるとはどういうことか、なんて考えています。
そんなに人に興味があったのか? と自分自身に驚く日々です。
ただ、考えて考えて、一周回って、やっぱり興味薄いなとか思っています。
シゴデキ会社員への道は遠そうです。
奇妙礼太郎/エロい関係
第5回で紹介するのは、奇妙礼太郎の「エロい関係」です。
奇妙礼太郎は、1976年の大阪生まれです。
メジャー1stアルバムのリリースは2017年ですが、
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団などでの活動もあり、プロのミュージシャンとしてのキャリアは、実はなかなかに長いです。
CMソングなども多く担当しているので、そちらで声を知った方もいるでしょうし、あるいはお読みくださっている方の中には、
テレビ朝日「キョコロヒー」で知ったという方もいるかもしれません。
こちらの曲は、2ndソロアルバム「More Music」に収録されています。
この曲、タイトルを見ると、ギョッとするという向きもあるかもしれません。
なにせ「エロい関係」なのです。しかもそれがアルバムの一曲目。
しかし聴き始めてみると、聞きやすいイントロ、オシャレなイントロ。
まったくベタつかず、むしろ爽やかさすら感じます。
そして、イントロの後、歌い出しのフレーズが飛び込んできます。
みんなが見てるその前で 二人にしかわからない
言葉で話をしよう 僕らはエロい関係
これを聞いたときの衝撃は今でも覚えています。
この部分に、直截的なワードは出てきません。
しかし、歌い出しから、「なんだこのエロさは」と思わないでしょうか?
そしてそれを「僕らはエロい関係」と言い切ってしまう。
そのリリックの強度。なんとカッコいいことだろう、と思いました。
ここで少し、言葉についての話をしましょう。
一つ大胆なことを言えば、言葉すなわち言語とは内輪遊びのようなものにすぎません。
同じ言葉を類似した意味で使うという約束事をもとにコミュニケーションが成立しているにすぎず、その約束事の外にいる人から見れば、その言葉を使ったやりとりは、空虚なものにしか見えないでしょう。
それは大きな単位で言えば、日本語とか、英語といった言葉ですし、
小さな単位で言えば、教室内での流行語(ジャーゴン)になります。
話を戻しましょう。
ここで問題になるのは、「二人にしか分からない言葉」です。
上述の、内輪の理論を適用するなら、二人は、他の人からは分からない、二人のみの空間に閉じたゲームに興じた経験があることを意味します。
そこに、実際の肉体関係があったかどうかは分かりません。
(ただし、あったと見るほうが自然でしょう)
しかしその密度は、二人の関係に官能的なニュアンスを持たせます。
だから二人は「エロい関係」なのです。
これほどまでに「エロい関係」に対する「エロい」表現は無い!
そう思い、初めて聴いたとき、私は大変な衝撃を受けました。
その関係は、しかし、順風満帆とはいかないようです。
別れや終わりを示唆する言葉が、歌詞のなかには頻出します。
それは「まるでフランス映画みたいな とても詩的な関係」だと言います。
ちょうど、ジャン・リュック=ゴダールのようなものでしょうか。
「勝手にしやがれ!」や「気狂いピエロ」を思い出します。
それでも最後、歌詞は、
僕らはエロい関係 それはエグい関係
と締められます。
別れを決定的に言って重くなるでもなく、情事を描いてどぎつくなるでもなく、この曲は終わります。
その爽やかさも、上質な映画を観たような、そんな気分にさせてくれます。
MVに出てくる赤い車が、とても素晴らしく、これもまた映画的です。
Spotifyにて、このシリーズ「今夜パパに内緒で」にて紹介した曲を入れたプレイリストを公開しております。
では、来週もまたお会いしましょう。
See you soon…