冷蔵庫と待ち合わせる 2.墓石、改め豆乳餅①
「墓石」という、縁起でもない名前のデザートがある、らしい。
らしい、というのは、インターネットで調べても出てこないもので、今のところ私の記憶の中にしか情報がない。
出典は有名な小説「あしながおじさん」だ。あしながおじさんには数々のスイーツが登場するが、「墓石」は主人公のジュディが「最悪な日」とした日に出てきたデザートである。墓石を見てジュディは孤児院を思い出し、うんざりする。ページの端に注釈があり「墓石:ヴァニラの匂いをつけたミルクゼリー」と書いてある。
これが私の記憶の全てだ。「あしながおじさん ゼリー」などで検索すると、有名なレモンゼリー(レモンゼリーの中で泳ぐと、浮くか沈むか?の議論に用いられたもの)のレシピが大量に出てくる。が、墓石のレシピはない。色々と検索ワードを変えてみたが、レシピはおろか紹介する文ひとつ見つからなかった。
あしながおじさんの本は実家に置いてきてしまったが、墓石の詳細はともかく、この見るだけでうんざりすると言われ、完全に存在が無かった事にされている可哀想な貧乏臭いデザートを食べてみたいという興味が強く湧いたのだった。
さて、そこで墓石を作ってみようと思い立ったのだけれど、ここでアクシデントが起きる。自宅でのお菓子作りが流行した為、ゼラチンや寒天などが全て品切れになっていたのだった。
墓石作りはまた今度にしよう。ただ、どうしてもミルク感のあるデザートが食べたい気分になっていたので、代替案として豆乳餅を作ってみる事にした。(続)