英単語をイタリア語に変える12のルール(Polygotへの道Ⅱ)
今回はイタリア語の単語を勉強せずにイタリア語を読む方法を紹介したい。
英語の語彙はフランス語経由のものも含めて60%はラテン語由来なので、実は少しコツを覚えるだけでほとんどの単語が流用できるのだ。
以下にその方法、十二個のルールを示す。
1.J、K、W、X、Y、の五文字はない。
イタリア語のアルファベットは21文字で、英語の26文字よりも少ない。結果として上の五つの文字が見られる単語は、置換作業が必要になる。
2.J=G
イタリア語では英語のJは全てGに変えられる。Jは中世以降の北イタリアから西欧州に広まった文字だが、今日のイタリア語は中部(トスカーナ)を基礎にしているので、これは使わない。
e.g.
Judgement=Giudizio
Justice=Giustizia
Judicial= Giudiziario
3.W=V
"W"はイタリア語にも古典ラテン語にも存在しない。古典ラテン語の時代には「Uの発音だったV」を、中世になって二つ並べたものがW(二つのU)となったのである。
e.g.
Wine=Vino.
Win=Vincere
Wind=Vento
4.K=C(Ch)
イタリア語にKはない。Cで足りるからだ。
実はCに続く文字をカ行で発音するのは、古典ラテン語から古英語に至るまで一般的な読み方だった。事実ラテン語ではCalendaeの省略が稀にKだったり、昔の英語でも"King"が"Cyng"と綴られていたことからも確認できる。
e.g.
Key=Chiave
Kilometres=Chilometri
5.X=S
どういうわけかエックスの最後の部分だけを残したような発音をすると、英語のXを含む単語をイタリア語にすることができる。
e.g.
Existence=Esistenza
Experience=Esperienza
Experiment=Esperimento
Exam=Esame
Explain=Esprimere
Sex=Sesso
6.Y=I
五百年前の英国人の航海記録を読んでも、IfをYfと書いたりしていて、この二つの混同は比較的最近まであった。事実ローマ時代はYは「ギリシアのI」と呼ばれていて、ギリシア語からの借用語くらいにしか使わなかった。これは今日のイタリアも同じである。
e.g.
Dynamic=Dinamico
Hypothess=Ipotesi
7.Hは落とす。
以上が存在しないアルファヴェットの置換方法。
ところで最後の例である"Ipotesi"を見た人は、なぜ"H"が落ちるのかと疑問を覚えたことだろう。これは単純な話で、我々イタリア人にはHが発音できないからだ。
これも元はギリシアからの外来語を発音するために輸入した文字で、ローマ人にとっては皮肉なことにある皇帝の名前などは訓練なしには発音できなかったらしい。ハドリアノポリスが今日Adorianoporiと呼ばれているのも、その結果である。
e.g.Honor=OnoreHave=Avere
Change=Cambiare
8.Ph=F
PhとFの音が実は同じというのはよく知られた話だ。何故別れているかと言えば前者がギリシア由来、後者がローマ由来という起源の違いによる。
これも元は別の音を表していたらしいが結局は同化してしまい、英語は表記を継続、イタリア語は簡略化してFに統一した。
e.g.
Philosophy=Filosofia
Physical= Fisica
Phoenix=Fenice
9. Shは置換できない
○ラテン語→英語→イタリア語
以上のようにラテン語をルーツに持つ英単語は容易にイタリア語に変換できる。
×ゲルマン語→英語→イタリア語
だがもし"Shout"のように"Sh"で単語が始まるのなら、それは「ゲルマン系語彙」なので、別の単語を覚える必要がある。
e.g.
Shout=Gridare
Shuffle=Mescolare(mix)
Shut=Chiusare(close)
10. 母音で終わる
上記のイタリア語の例は全てa, e, i, o, の四ついずれかで終わっている。イタリア語は日本語と同じく母音をはっきりと発音しないと気が済まないので、単語の最後をa, e, i, o,にすればイタリア語っぽくなる。
男がo, i,
女は a, e,のいずれかで終わる。
11. 子音は続かない。
続くとしたら日本語のように跳ねる時だが、
obtain=ottenere
のように間のbなどを落とすことがよくある。
e.g.
Optimus= Ottimo.
12. ~tion=~zione, sione.
英語の動詞は後ろにtionをつけると名詞になる。translate to translationという具合にだ。イタリア語でもこのルールはそのまま適応されるので、英単語の動詞や名詞をイタリア語の名詞に直すことができる。
e.g.
Station=Stazione
Traduttore=Translate
Translation=Traduzione
Conclude=Concludere
Conclusion=Conclusione
結論:Conclusion=Conclusione
これら十二個のルールを覚えておけば、ほとんどの英単語が変換可能なはずだ。
go(andare)やdo(fare)などの原始的な語彙に関しては直接変換はできないが、これも別の道を辿ってみると繋がりがわかったりする。
英語のAmbulanceは歩く者という意味でandare(行く)と共通の祖先を持っているし、fareという動詞は英名詞のfact(事実)と起源を共有し、イタリア語にもfatto(事実)として残っている。
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