プロジェクトデザイナーのデザインとは何か?
プロジェクトデザイナー2つのデザイン領域
プロジェクトデザイナーが同時に取り組む2つのデザイン領域があります。「設計としてのDESIGN」と「意匠としてのdesign」
この2つのデザインはプロジェクトの成功において極めて重要な役割を果たします。
前者(設計としてのDESIGN)はプロジェクトの戦略的設計を担い、後者(意匠としてのdesign)は具象的な実装とユーザーエクスペリエンスを形作るものであり、両者の相補的な作用がプロジェクト全体の成果に直結します。
蛇足ですが、私は建築家を目指し建築学科&研究科に在籍、20~30代前半はデザイナーとして活動しており、専門学校の講師などもしておりました。今はいわゆる一般的なデザイナーという職業ではありませんが、基礎力としてのデザイナースキルは持っています。
今回の記事はプロジェクトデザイナーと2つのデザイン(DESIGN & design)についての考察です。
設計としてのDESIGN
設計としてのDESIGNは、プロジェクトの全体構造や戦略、目的を定義する領域です。
ステークホルダーや経営陣が意思決定を行うための基盤を提供し、プロジェクトの方向性やフレームワークを設計します。システム思考やプロセス設計、組織設計などを駆使して、抽象度の高いレベルでの計画もここに含まれます。
意匠としてのdesign
意匠としてのデザインは、プロジェクトが具体的に提供する製品やサービスの形態、美学、ユーザーエクスペリエンス(UX)、カスタマーエクスペリエンス(CX)に焦点を当てます。これはデザイナーやエンジニアなど、現場で実際にプロジェクトを完了する人々にとって重要な領域であり、ユーザーが実際にどのようにプロダクトを体験するかをデザインします。
※プロジェクトまたはプロダクトにおける「美学」とは今後の重要な領域と考えています。
デザイン領域の統合による相乗効果
これら2つのデザイン領域を統合的に扱うことで、プロジェクトデザイナーは組織内の異なる視点や関心を融合させ、ステークホルダーや現場、ユーザーへのメッセージの相互の橋渡します。
具体的な例としては、経営層と現場の「ズレ」を解消し、全員が「同じ絵・景色」を見て、「同じ視座・視点・方向」で語れるようになることを目指しています。
その目的はプロジェクトを成功させるためにはどうすべきか?という事です。私はこのゴールを忘れません。
デザインの統合アプローチでメタ認知力の拡張
設計と意匠のデザインを扱う統合アプローチは、メタ認知力の拡張にも最適です。
メタ認知とは、自分自身の思考プロセスを認識する能力であり、プロジェクトデザイナーが両方のデザイン領域を扱うことで、プロジェクトの潜在的な問題点や機会を早期に発見し、適切な対策を絵にして論じることが可能になります。
発見とは可視化であり、意匠としてのデザインの力はそれを皆に伝える能力です。
記号論とデザインの解釈
記号論の視点から見ると、デザインの事象における「構造」と「意匠(表層)」の関係性は、ソシュールのシニフィアン(能記)とシニフィエ(所記)の関係に似ています。
ソシュールの記号論では、シニフィアンは「音声」や「文字」といった記号の表現面を指し、シニフィエはその記号が持つ「意味」や「概念」を指します。この関係をプロジェクトに適用すると、構造(DESIGN)がシニフィエ、つまり概念や意味のある内容を提供し、意匠(design)がシニフィアン、その概念を具体的な形やデザインで表現します。
この2つが調和することで、プロジェクトは一貫性のあるメッセージや価値を提供することができます。この調和がなければ、プロジェクトのメッセージが曖昧になり、ユーザーやステークホルダーに対して効果的に伝わらないのではないか?
この2つを調和させるのはプロジェクトデザイナーの価値ではないか?私の起点はここです。
プロジェクトデザイナーは設計と意匠を同時に扱う
プロジェクトデザイナーは、メタ認知の視点からプロジェクト全体を俯瞰し、経営と現場のギャップを埋めること、そしてデザインを記号論的なアプローチで構造(DESIGN)と表層(design)と分離と統合を同時に行い、一貫性のある価値を提供するスキルがあります。
両立思考(Ambidextrous Thinking)という考えもあります。これは、異なる視点や対立する目標を同時に扱い、相互に補完し合うように調整しながら進む思考法です。これは、組織と個人、安定と変化、短期成果と長期的なビジョンなど、異なるニーズをバランスよく追求するための思考です。
※ジンテーゼ(Synthese)という考えの方が近いかもしれません。
「プロジェクトデザイナーは設計と意匠を同時に扱う」このコンセプトは、現代の複雑で変化の激しいビジネス環境において、プロジェクトの成功に向けて極めて重要であり、今後ますますその重要性が増していくと信じています。両立思考です。
実践を通じて理論の体系化を行っています。
AIとの共創
o1-previewというAIの登場で自分の思考の整理のスピードが早く深くなっています。思考の拡張です。例えばこの週末だけで1年以上の成果を手にした感覚があります。今回の記事もo1-previewとの対話の中で論点を整理したものです。