綿矢りさ『かわいそうだね?』
本書は『かわいそうだね?』と『亜美ちゃんは美人』の2作で構成されている。
白い背景にピンクの花が散りばめられている表紙。
そこには「すべての女子、必読」の文字……。
私は「人間あるある」を言語化してくれる作品にめっぽう弱い…。
「分かる…この気持ち……よく言語化してくれた…」となりたいのだ。
そして購入。ようやく読めました!
感想や考えたことを以下に書きたいと思います!
『かわいそうだね?』
あらすじ
ただただ安っぽく「かわいそうな」女・アキヨと、好きな男のために自分を武装していた樹理恵の対比が良い作品。
主人公はいわゆる「女性が憧れる女性」。
美への意識が高く、仕事も、彼氏との交際も順調。
彼女自身も「そうなろう」と努力しているところが見えて、女性目線で言えば凄く好感度が高い。
そこで登場する、
彼氏の家に居候するらしい女(しかも彼氏の元カノ)アキヨ…。
いわゆる「男性が好きそうな女性」。
隙があり、良く言えば庶民的。
(主人公の目線で語られる、アキヨの雰囲気や外観が凄くリアルで、めちゃくちゃイメージできてしまって…。ぜひ読んでみてほしい…笑)
考えたこと
この作品を読んで、
「かわいそう」という言葉は、
「慈悲を与える者」として自分を武装し、相手を赦すことなんだなと感じた。
樹理恵はそんな「かわいそう」で何とかアキヨを赦そうと試みる。
友人に相談し、英会話教室の講師達に相談し、自分の中でこの状況は「仕方のないこと」だと思い込もうとする。
……好きなんだもんね、隆大のこと……🥹
……分かる、自分の恋人に浮気疑惑が発覚したら色々考えてしまうと思う。
(え、嘘、そんなことできる人じゃないでしょ、違うよね…みたいな)
しかし最終的に、樹理恵は隆大&アキヨとの修羅場をきっかけに、
樹理恵はそんな武装はせずに、愚直に生きるべきだ、心に嘘をつかずに生きるべきだと感じる。
生きたいように生きよう。
赦したくないことは赦すな、殺せ。みたいな。
終始、めっちゃアキヨにイライラしたし、
例のメールを見たときつい「きっしょ」って声出しちゃった。笑
まぁ、でもそれは彼女なりに武装して生きてるんだろうなーと。
安っぽく見せるか、そうでないかも結局、
武装してることに変わりないのかなと。
「かわいそう」に甘えて自分が「かわいそう」になるのか、
自分が「かわいそう」を赦すのか。
そういう赦す、赦されに構わずに、
自分の欲や気持ちをベースに生きてぇな、って思わされるお話だった。
(「生きたいな」ではなく「生きてぇな」って思います。伝われ。)
『亜美ちゃんは可愛い』
あらすじ
このお話も共感できるな、という感じ。
分かる、可愛い子の隣にいると自分の役割が決まる感じ。
分かる、周りの視線と言動。
分かる、可愛い子の無邪気さが鬱陶しくなる感じ。
でも、結局可愛いんだよな、
つい目で追っちゃう気持ちも分かるし、
打算的にその子と一緒にいちゃう気持ちも分かるし
どこが可愛いのか、自然と分析してしまうとこも、分かる。
「可愛い」が厳格に判断されるようになった今の世の中だからこそ
共感できる方も多いお話なのかなと思います。
考えたこと
さかきちゃんにとって亜美ちゃんは、
「自分を(女として)損させる存在だけど突き放せない」ような存在だったんだろうな。
突き放せないのは、亜美ちゃんが自分を「一人の人間として」無邪気に慕ってくれているんだと感じていたから。
でも、そんなさかきちゃんも、
毅との交際を通して「自分が肯定され、これ以上損しない」と
安定したところから、
客観的な視線で亜美ちゃんを見て、冷静に接するようになれるところも、
凄くリアル。
そして、さかきちゃんは、迷う。
亜美ちゃんの「(恐らく破滅に向かうであろう)結婚を止めるかどうか」について。
冷静に考えれば「止めるべきだ」となるけど、
それまでの自分の損な立ち回り経験があるから、
自分が、
・破滅に向かうであろう友人を止める親友として居ればいいのか
それとも
・自分がここまで「かわいそう」でいた原因である亜美を見捨てればいいのか
分かんなくなるんだよね。
(絶対、毅と付き合ってなかったら(無慈悲に)「見捨てる」選択をしたのだと思う。私ならそうする。毅と付き合ってるからフラットな思考で亜美について考えられたんだろうなと思う。)
結局、亜美ちゃんの本質に、
亜美ちゃんの一番近いところにいた自分が気付いて、
結婚を止めないことが優しさなんだって気づいたんだよね。
それは無慈悲に見捨てることよりもずっと温かい選択だった。
最後に…
「さかきちゃん」が苗字で、「亜美ちゃん」は下の名前
ってのもリアルですよね、笑
可愛い子って下の名前で呼ばれるよね笑
それで、しっかり者な子とかが苗字で呼ばれがち。
それが最後のウェディングのところで明らかになるのも、
彼女らのこれまでの痕跡を感じるけど、
でも、彼女らはきっと、これからもずっと友人なんだろうな。
心からの友人になったんだろうなって、何となく感じる。