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〝ともだち〟のはなし。

   これは私の友人だった子のはなし。


   私の罪のはなし。


   風が強いこの土地で、春風が終わりを告げる頃。
寒さのない、別れの季節は過ぎ去ったこの季節で

私たちの仲の良いグループから1人が去っていった。

もともと集団で楽しむことに向いている子ではなかった。
しかし、確かに彼女は私たちの中に馴染んでいたし
大きな喧嘩ごとがあったわけではなかった。

ただ、よく学校を休む子だった。

ある時は頭痛が酷くて
ある時は気持ちが悪くて

そしてある時は、彼氏の元から離れたくなくて


体調不良は何も、彼女が望んだことではないから
仕方がないと思っていた。
実際に彼女は辛そうにしてきているのを見てきたし
それなりに自律神経的に問題を抱えているのは知っていたからだ。

納得できなかったのは後者の理由だ。


「彼くんと遠距離になっちゃうと思うと、
  離れるってなると泣いちゃって...。」
と、彼女は言った。




彼女は頭が良くなかった。それこそ学年でビリだ。

レポートは書き方が分からない。
パワーポイントは作れない。
何度私が手伝ってきたかも分からない程に周りの手を借りていた。

授業を休むから余計にできないことは多かった。

彼女は自分ができない、知らないことを私たちのせいにした。

「ともだちだったら、助け合うのが普通じゃない?」と、彼女は言った。真面目な顔をしていた。


学期末試験

彼女の結果はかなり悪かった。
もしこれが2年生の結果なら、進級出来ないほどに。

「あれだけ頑張ったのにダメだった」
彼女は泣いていた。



何とか一年次をパスし、私たちは2年生になった。

彼女はやっぱり休みがちだった。


学校が始まる前日のある夜。
彼女の彼氏から、彼女が酔っ払って笑ってる動画が送られてきた。

翌日。彼女は学校に来なかった。


私は彼氏に
「あの子をちゃんと学校に来させてください。」
そう、連絡を送った。


「ここ最近気分が乗らないみたいです🥲」

そう、返事が来た。


私は自分の感情に、どろりと黒いものがあることを自覚した。
前日散々遊んで、それでいて気分が乗らないから学校に来ない。
彼女が学校に来ない事は私にとって関係は無い。
だが、試験の日泣いたのはなんだったのか。
私たちに対して、ともだちだったら助けてくれ、と。
それはやる気があったからなのでは無いのか。
私が彼女の勉強の為に尽くしてきたのはなんだったのか。
彼女だけ遊んで私は......。
私は一体何をしているんだ。


私は苛立ちのままに

でも、最後に、ともだちとして


貴方は遊んでいる場合じゃないということ。
このまま遊んでいれば成績以前に学校に行けなくなること。
そしたら、
奨学金も全額返さなくてはならなくなること。
貴方がいつまでも遊んでるのであれば私たちはもう何も手伝わないということ。


厳しくも、当たり前の事だと
少なからず私はそう思ってる。

私は彼女の母親ではない。

面倒を見る義理はどこにも無いのだ。


彼女の反応は辛くも
突き放されたという嘆きそのものだった。

私は意地悪で言っていた訳では無い。
苛立ちつつも、また彼女が学校に来れることを願っての事だった。

しかし彼女から見たら、
学校に来いと急かしている人間でしか無かったようだ。


至極、下らない。


気持ちというものは
こんなにも伝わらないものなのか。

私の気持ちというのは、
こんなにも考えて貰えないものなのか━━━


彼女はそれから、学校には来なかった。


私にもっと言いようがあったのか

もともとそんなに関わらなければよかったのか

いずれにしろ、正しい友達としての在り方ではなかったのだろう。


私が頑張った、とは言えども
それは主観的なもので評価できるものでは無い。

彼女も彼女なりに頑張っていたのだ。


でも、私は...
もう少し報われたかった

彼女は来年度からまたやり直すらしい。

もう私たちはともだちでは無い。

ともだちとしての精一杯の意義を遂げて。

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