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幻聴さん
誰もが自分らしくいられる「ひのアートカフェ」を月1回開催しています。
10月ひのアートカフェでも書いたのだけど、きっかけは、私が以前の福祉事業所を去る時に、利用者だった統合失調症のHさんが、「絵はもう、やれないんですかね〜…」と寂しそうに言ったからなんだ。
そのHさんは現在73歳。都営団地で一人暮らしをしている。句会に参加したり季節の花を観に行ったり、落ち着いた印象のどこにでもいそうなおじいさん。
だけどたまになんとも言えない面白いことを言うので、ここに記録として残しておきたい。なんだろ?これ、誤解を恐れずに言うなら病気ならではの強みというか魅力というか。ふわっと温まる感じがしませんか?
統合失調症なのに統合失調症の人が怖い?
何年か前に「統合失調症の発症数は100人に1人だそうですよ」と言ったら「え?そんなにいるんですか?怖いですね」と。
「怖い?」と尋ねると
「だって100人に1人なんて多いですよね。そんなに病気の人がいるなんて怖いじゃないですか」と真顔で言ったりする。
幻聴の話を淡々と
昔話になった時のこと。
「子供の頃の写真は、日野駅に置いてきました。え?何で外へ持って出たかと言うと、幻聴で、そうしろって言われたんですよ。自分の荷物を全部まとめてO市の知人のところで暮らせと。その出発の時に、これはここへ置いて行け、これはあっちへ置いて行けって言われてね。それでなくなっちゃった。」
「そこからO市までタクシーで行ったんですよ。確か13000円くらいだったかな。自分で持ってたのは8000円くらいだったから、知人が驚いてね。タクシー代の残りを払ってくれて、弟のところに連絡が行って、弟が飛んできてそれで入院になったんですよね。今考えると、まともじゃないんだけど、その時はその考えがおかしいと思ってないんですよね。あの頃は一番きつかったですね」
「今でも幻聴はありますよ。幻覚はないですが。」
「はっきり聞こえます。と言うか、そう自分で思い込んじゃってるんですね」とHさん。
「え〜そうなんですか!知らなかった」と言うと、
「幻聴があるなんて話はしたってしょうがないからね。そんな話はしないようにしてるんです。そんな突拍子もないこと言ったら、頭のおかしい人だって、周囲から思われるだけでね、いいことはないですよ。幻聴はね、今でも聞こえますけど、会話したりとかあまり相手にしないようにしてるんです。相手にすると、向こうに飲み込まれちゃいますからね。」
「そりゃそうですよね、また入院、になっちゃうし」と私。
「そうですよ。何もいいことないですから。昨日も発作があってね。頓服飲んで耐えるしかないんですよ。あ、でもね、幻聴さんはいつも側にいるもんですからね、おかげでね、一人暮らしでも寂しくないかもしれないですね。」
その達観ぶり、見習いたいなあ。
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