少年葬

ぼくのやさしい遺書は、とても難しい誤読をされて、とうとう誰の心にも届かなかった。
きみの骨とぼくの骨はとてもよく似ていて、裂いた腹から咲いた花がきみと色違いだったから、てっきり同じ言葉で軋むものだと思っていた。
いつだったか、ぼくはきみの言葉を「白痴みたいだ」と言った。
いまのぼくはただの"死"で、対義語がない。
どうかきみに、換言不可能になったぼくを綴ってほしい。
ぼくが皺だらけになって最期を迎えるはずだった、清潔な病室/点滴のひかり/失念した花/透けた血管に透ける銀色/白濁ながらも無垢な視界/僕/俺/きみ/君/私/あなた/そしてぼく。

結局、白痴は誰なんだろう?
傷つけられるのがとても怖かった。
だからぼくは、ぼく自身の心をうすく輪切りにして、円盤になったぼくに針を落とした。
回転数、上げていく。
聴こえない聴こえない聴こえない聴こえない!
だってぼくは子守唄で失聴したから!
破れた鼓膜奥、で吹きさらしになった鼓室、に積もっていくだけの、音未満の音、は、ひとつの塊になって完璧な閉塞を遂げた。

ぼくが生まれた夏は陽炎が火葬してしまった(もっときみと居たかった)。ぼくの愛した冬は桜前線によって裁断されてしまった(ここで息をしたい)。ぼくを見捨てた春は五時間目の生ぬるい教室でいつまでもぼくを愛撫した(痛いという味覚)。そしてぼくが死ぬ秋(肺に吸い込んで)、きみが好きと言っていた彼岸花の首は折れて(酩酊)、残された堅い茎はまっすぐに上を向いている(ここで遺棄をする)。

ずっときみと遺体のぼくは、

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