新時代の大輪の花
ハナミズキの花がはじめて立派に咲いてくれた。
花びらは、追い羽根の羽根のようで小町娘を思わせる。
十年以上も前の事、となり近所に植木職の頭領が住んでいて、
立ち話から花水木を2本、庭に植えて貰うことになった。
木はどんどん大きく育ったが、花らしい花が一向に咲かない。
どうしたものか頭領に相談すると、根を少し切って、
イジメてやるといいと言われた。
「イジメる?」それはいやだなと思った。
確かに大通りの街路樹の花水木は排気ガスに晒される
厳しい条件の下で見事に咲いている。
植物は苦境になると花を沢山咲かせて、
子孫を拡げようとするものらしい。
でも、花がなくても幸せに生きてくれれば、
それでいいかと花はあきらめてきた。
それがどうだ、今年は満開だ。
待てよ、ということは何かここで辛いことでもあるのだろうか。
なんなら聞かせて欲しい。
大谷翔平という希代の野球の名選手を見ていると、
イジメ尽くされ厳しく鍛えられて
花を咲かせたようにはとても見えない。
両親の愛情をたっぷりと蓄え、学校の先生、
コーチの大人たちの優しさを素直に受け取って、
ひたすら自分を高めることに専念して咲いた
新時代の大輪の花のように信じたい。
地獄の特訓、鬼コーチ、愛情のビンタ、根性一筋などという
妖怪を一掃してくれたようで、それが嬉しい。