美味しいってなんだろう
パンダがむしゃむしゃと笹を食べている姿を見るたびに
笹の味だけで生涯を過ごすのかと思うと気の毒でならない。
元より、うまいまずいの言葉がないので
味という認識がないのかもしれないが・・。
そこにゆくと幸い人の食生活は桁外れに複雑である。
テレビでは食べ歩き、料理、グルメ番組が矢継ぎ早に放送され、
うまい物への意欲が煽られる。
味覚の基本は、甘い、酸っぱい、苦い、塩っぱい、旨み味の五つあるが、
他に、辛み、渋みもあり、柔らかい、堅いの食感もある。
温かい、冷たいも重要で、寒い季節にフーフーと啜るラーメンは格別だし、
夏の暑い中、汗をかきながら飲むビールの冷たさはご馳走だ。
匂いの要素も大きい。鼻から抜ける香りの風は、
味そのもので特別に「風味」と呼んだりする。
味わいには色も重要で、赤やオレンジは成熟を思わせ食欲をそそるし、
青はまだ食べるには早すぎる、紫はカビの毒の色で警戒するように
刷り込まれているから食欲にブレーキがかかる。
黄色はレモンの酸味を感じるし、ピンクは甘みを感じる。
味は舌のセンサーの味蕾から脳に伝わり、食体験、味の記憶の膨大な情報を
瞬時に整理して脳がおいしいとかまずいとか判断する。
更に人は複雑で、食事の時の空間的心理も大事だ。
正装して畏まって食べると味わい難いが、気の合う仲間たちと
楽しく食事するとオキシトシンという共感ホルモンに
満たされて美味しさが倍増する。
甘みは快楽ホルモンが出てストレス解消、
酸味は新陳代謝の促進、
苦みはコーヒー、ビールで分かるようにストレス解消、沈静効果、
塩味は体液のバランスやミネラル供給、
渋みや辛みは、発汗、食欲増進、抗菌効果がある。
旨味は早々に満足感の信号が脳に伝わるので、
食事量を減らせるから減量に有利。
他の動物が命を繋ぐエネルギー補給として食べるのに対して
人の食事はどうしてこんなに多様で複雑で心理的で情緒的なのだろうか。
それは言葉を獲得して知能が飛躍的に発達したからなのだろう。