
想いをつなぐ
東野圭吾さんの小説、「クスノキの番人」を読みました。
自分には何の取り柄もないと思っていた主人公、玲斗が突然現れた叔母を名乗る女性から、神社の大きな「クスノキ」の番人を任されることに。
クスノキの番人の仕事を通じて成長し、叔母もまた、玲斗によって救われる、心温まる素敵なお話でした。
本作のテーマは「想いをつなぐこと」かな
息子から母へ。
父から子へ。
去り行く人から未来を担う人へ。
どんな形でも、懸命に生きた人のヒトカケラ。
誰かの心に残っていくもの。
どんな最期を迎えても、大丈夫。
ひとりじゃないよ。
想いはつながる。勇気をもらえるラストです。
「武士道」で有名な新渡戸稲造さんのエピソードを思い出しました。
民俗学者の柳田国男さんと一緒に「郷土会」というものを立ち上げたそうです。民主主義を重んじ、誰でも自由に発言ができ、柔軟な意見を持つ人達だけで構成されたグループ。
結果、居心地はとても良かったのですが、「幹」となる精神がなく、引き継がれることはなかったそうです。
やはり、何かを形にしていくには、「幹」というか「イズム」が必要です。それには賛否もあるし、時代も変わっていく。
「イズム」の何を守り、どこを変えていくのか。
この「クスノキの番人」にも「イズムの継承」問題は登場します。最後に主人公の成長した玲斗がこの問題に言及する場面、スキです。
先人の想いを継ぎながら、時代に合わせて形を変化させる。
そんな柔軟な心を持っていたいです。
わたしはサラリーマンの家庭に育ち、自分も会社員として属しているので、大きな「イズム」を背負っているわけではありません。
でも、小さなことですが、祖父母が大切にしていた言葉、父母から受け継いだ教え、を自分なりに大切に育てて、次の世代に繋げていきたいな、と思います。
将来、私の想いのカケラを拾ってくれる誰かのために。
東野圭吾さんの、誰も傷つかない物語、好きです。