🌿 透明な巨人 〔詩〕
春のおわり頃
たんぽぽの綿毛を運ぶ透明な巨人は
僕のTシャツを柔らかくなびかせて
通り過ぎて行った
どこまでも真っ青な空と
同じ色に見え隠れしている透明な巨人が
連れ去った時間を成層圏で逃してしまったから
消えかけていた記憶が
太陽にきらめきながら降りそそいだ
停滞する秋雨前線に
なすすべもなく振り回され
なぎ倒してしまったナナカマドの赤い実を
透明な巨人は悲しく見つめながら
鳥たちがやって来るまで
冷たい体で行ったり来たりしていた
凍りつきそうな夜
幾つもの星々が瞬いていた
なんだかすべてのことが
あの小さな光の中に
閉じ込められてしまいそうな気がしていたら
透明な巨人が雪雲を連れてきて
光でいっぱいの雪が舞いはじめた
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