a bientot
パン屋さんのパンが好きだ。
小麦粉が美味しいからか、バターが美味しいからかわからないけど、コンビニのパンとは全然違う。
一口噛むと、香ばしさが鼻を駆け抜けて、サクサクっと生地が音を立てる。幸せな瞬間だ。
今日は近所のパン屋で2000円分のパンを自由に買う機会に恵まれた。パン屋さんのパンはそれなりに値段が張るものだから、買うときはいつも慎重に吟味して2、3種類を選ぶ。それが、今回はいつもの予算の3倍ほど買える。とてもうれしい。
そもそもなぜこんな幸運に恵まれたかというと、パン屋さんが入っているビルの、他の店舗で買い物をした際に、サービス券をもらったのだ。一定額以上購入したら、サービス券が何枚もらえるとかいうイベントで、私は割と大きな買い物をしたから、パン2000円分の券をもらうことができたのだ。
その時の買い物は、他界した母の兄姉に送るお菓子だった。ちょっと他にはないものを扱う粋なお菓子屋さんで、そこのお菓子詰め合わせを贈ったのだ。母の兄姉は6人いるから、けっこういい買い物になった。
でもその時の費用の3分の2は、父から預かったお金を使った。元をたどると、祖母が他界した時に母の兄姉が父にくださった御仏前だ。それを父は使わないで取っておいて、私がお正月に実家に帰った際に、お兄さんお姉さんたちになにか贈り物をと数万円を私に託したのだ。
今回のパン屋での2000円券はそんな所以で恵まれたものであった。だから、ありがたいなと思ってパンを選んだ。
パンを包んでもらって、そのうちいくつかをお店で食べた。ジンジャーエールを飲みながら。3つくらい食べて満足していると、パンが入っている袋が目に入った。
「a bientot」
サーモンピンクで彩られた文字と美しい風景。
意味は、「see you soon」
私は他界した母からのメッセージのように感じてならなかった。ご縁のある買い物、偶然のようで偶然でない気がする。来るべくしてきたパン屋さんだったのかな。
また会えるんだと分かって、うれしかった。