【まくら✖ざぶとん】㉓『風吹かすそば屋もうからじ』
ジメジメとした梅雨が明けりゃいよいよ夏本番、海開きにプール開き、開放感で女子も股を開きがちな季節がやってきたってのに、このところめっきり姿を見せず六席ぶりに登場するそば屋のせがれは時季を問わず湯に浸かりたがる風呂好き、まあひまさえあれば銭湯やらサウナやらに行きたがる。
そば屋の営業からあがりゃ風呂、てめぇの家の風呂にゃ入らず近所の銭湯に夜な夜な通い詰めてるってんなら銭湯の湯船のみならず独特の湯浴み文化にもどっぷり浸かりそうなもんだが、そこはヘタレのそば屋のせがれ、いっそのことそば屋のヘタレ、三つ子の魂なんちゃらとはこのこと、心に染みついた気弱で小心者のタチは湯をかぶったくらいじゃ洗い落とせやしねぇ。
通いに通ってるのも近所に新装改店した銭湯ばかり。昔ながらの常連が集う老舗に行きゃ、まず湯が熱くて入れやしない。アチ、アツ、アイテテ、とアトがつかえてるのにもたもたもたつき、水風呂よりも冷ややかなジジイどもの舌打ちと嘲笑を浴びやしないか怖気づく。サウナもサウナで流行りのフィンランド式ロウリュも苦手、熱波と呼ばれる熱風を浴びせられて胸を反らして顔を背ける前に尻尾を巻いて逃げ出した先の水風呂にも背を向ける。
そんなんでよくもまあえらそうに銭湯好きを公言できたもんだが、やれあそこの銭湯はいい、やれどこそこのサウナはどうの、とどこ吹く風をびゅんびゅん吹かせて風呂だけに大風呂敷を広げっぱなしなら桶屋は儲かれどそば屋稼業のほうは儲かるまい。好きは好きでも熟達の見込みまるでなし、好きこそものの上手なれの逆を行くそば屋のヘタレこそその対義語、下手の横好きならぬヘタレの風呂好き、ってことで残念無念おあいにくサマー!
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えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!