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【まくら✖ざぶとん】⓵⓹⓪『常夜鍋』
さて年の暮れも暮れだよ大晦日、寒い季節にゃあったかいネタに限るってんでおでんの次は鍋、鍋といったら江戸っ子四人組、江戸っ子四人組といったら年越しってことで、続編にしてオマージュ的な一席でよいお年を!
とまぁ、とにかく食卓やら雀卓やらを囲んでばかりいるのが江戸っ子四人組、かつて闇鍋をつついた四人が大晦日に宅呑みの卓呑みで囲む鍋は鍋でも「闇」ならずとも「夜」がつく常夜鍋。
台所で出汁を沸かしつつ具材を切ってせっせっせと下準備すりゃよいよいよーい♪と先に乾杯、出汁の中にポン酒をどばどば注げばめでたい気分、「酒を落とす」と書いて「洒落」ってんだぜ、と白菜に豚肉を大量投入、〈ミルフィーユ鍋〉の呼び名も知らぬ連中がお洒落を語るなんてもってのほかだが鍋はもってみずしてほかほか。
ぐつぐつ煮立った鍋を卓上コンロに乗っけりゃいざ宴会、江戸っ子四人組だけに江戸幕府の役職になぞらえて当てはめて役割分担、鍋を挟んで相対するのはおなじみ鍋奉行と灰汁代官、脇を固めるのが膳奉行と町火消し。
町火消しの最初の仕事は火消し役ならぬ火付け役、カチチチチチチ、とつまみをまわして着火したら火の見あぐらで低みの見物、見るのはもちろん火加減、「待ち」の一手の待ち火消しとて出汁が沸騰すれば火力調整、予備のボンベを拍子木がわりに打ち鳴らしては「火の用心!」。
鍋を取り仕切るのは鍋奉行、「お任せあれぃ!」と勘定奉行ばりの大見得を切って振るのは指揮棒ならぬ菜箸、白菜はくったりくたくた、豚肉はねっとりぬらぬらの煮加減で。肉の灰汁を取るのが灰汁代官、「鍋の味を濁すたぁ、お主も悪よのう。灰汁だけに」といい加減に掬い取る。
膳奉行は毒見役と薬味担当、ポン酢に七味吹雪を吹かせた取り皿ならぬタレ皿は絶妙なさじ加減、「このもみじおろし、散らせるもんなら散らしてみろぃ!」、決め台詞を言うか言わぬかするうちに肉が煮えれば毒味役、そろりそろりと口に入れるや「…美味でござりまする」。
鍋を取り分けるのも鍋奉行、全員に取り皿が行き渡れば「それではみなさんご一緒に」、お手を合わせて「いただきます!」
「火の用心!」
「お任せあれぃ!」
「お主も悪よのう」
「美味でござりまする」
腹がふくれる頃にゃ例のごとく全員ベロベロ、「洒から脱する」と書いて「洒脱」ってんだぜ、たしかめるようにたしなめ合って「酒はたしなむくらいです」は来年の抱負に先送り、ぐったりぐにゃぐにゃ寝入っちまえば、〆に用意してた年越しそばがわりの太麺もあえなく新年に持ち越しうどん!
来年も良い落としを!!
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