【まくら✖ざぶとん】①⑤②『国外逃亡』
さてはて年賀枕を経ての年明け二席目とあらばもう通常運転、今年の正月は寝ても覚めてもまた寝てもカルロス・ゴーンの話題で持ちきり、ゴーン、ゴーン…と除夜の鐘とともに鳴りはじめて世界中に響き渡ったのは日本の司法制度への警鐘、なんてのは新年早々まじめにまとめすぎ。
私は今レバノンにいる/I am now in Lebanon。
突如として公表された声明は寝耳に水ならぬ寝正月に水、見つかる前に自ら名乗り出ての完全犯罪はまさにミッションコンプリート、〈Mr.インポッシブル〉たる異名に違わず成し遂げた保釈中の逃亡劇たるや『ミッション・インポッシブル』のアクション俳優トム・クルーズ顔負けの偉業。
かつて無残にも見破られた杜撰な変装作戦も伏線?かと思わせるほど鮮やかなプランの決め手はプライベートジェット、関空発トルコ経由のフライトルートでベイルート入り、大金をふんだくっての高飛びならよく聞くが大金をふんだんにつかっての高飛びはさすが元CEO、元CIA局員エドワード・スノーデン顔負けの亡命じみた逃避行で消え去ること亡霊のごとし。
"ghosn is gone like a ghost"
世界のメディアが書き立てたものの国民の興味を掻き立てたのは逃亡方法のほう、楽団員を装ってコントラバスのケースに入ったのが事実ならアクション芸人エスパー伊東顔負けの隠し芸ならぬ隠れ芸、コミカルなシーンを脳内想像すれば思い浮かぶのは似てると言われて久しいMr.ビーン、映画化の際はコメディ俳優ローワン・アトキンソンがキャスティングの大本命。
記者会見でしかし逃亡方法は明かされず、人質司法に人間としての尊厳を貶められたと恨み節、中でも根に持ったのが一週二浴きりの風呂シャワー、レバノン高飛びで憎っくき東京拘置所とオサラバーしたらそりゃもうご機嫌、「♪ゴゴンゴゴンゴンゴーン♪」、コメディバンド〈ザ・ドリフターズ〉のコミカルなテーマが脳内再生、「♪いい湯だな、あーレバノンノン♪」。
ハッピーニューイヤーではあれ「めでたしめでたし」のエンディングじゃただのおめでたい人、今や被疑者ではなくインターポールから国際手配されたルパン顔負けの逃亡犯。思えばルパンもスノーデンもトム・クルーズ演じるイーサン・ハントもdrifters(=ドリ・フターズ)で土地から土地への流れ者、どっこい出国禁止のゴーンさんは箱入り社長で「もー出ちゃノンノン!」