【まくら✖ざぶとん】①⑤③『神戸事変』学者肌の論客 第➑回
いやはやカルロス・ゴーンが国外脱出に使ったプライベートジェットが世界をにぎわせた矢先に起きたのはプライベートヘリの墜落事故、乗っていたのがバスケットボール界のみならずスポーツ界全体でも指折りのレジェンド、コービー・ブライアントだったときたら世界は大激震。
事件発生は日本時間未明、アメリカでは大々的に速報が打たれども日本でニュースになるまでには猶予あり、そのうちにツイッターで事実を見知った人々が口々につぶやいたのは追悼の言葉。
現地と現在地の距離を飛び越えて電波の速さで言葉を受送信できるのが現代SNS社会ではあれ、「追悼・哀悼の意を示す」とは本人の死を受け止めたからこそできるもの、現実感のないまま発生後すぐに発せられた追悼の文句に実感が伴って聞こえるはずもなく、記号にしか見えぬ単語が次々と並べられていくことに違和感が押し寄せる。
よくある訃報ならともかくヘリの墜落事故というスケールの大きさも相まれば、世界的著名人が若すぎる死を遂げたショッキングなブレイキング・ニュースはまさに曇天の霹靂、出来事を噛み砕いて呑み込んでから感情が喚起されるまでの流れを汲まずあっさりと悼む人が続出する様子には仰天と辟易、個々人が示したいだけの追悼は空々しく響き、その言葉をやにわに絞り出せない人たちへの想像力の欠如は両者の断絶を隔てるばかり。
それでも事故が起きたのが事実には違いなく、情報過多の時代において情報は消費物にして消化物、情報処理の速度が上がれば反比例するように狭まるのが感情の振り幅、それを広げるべく「書いて出し」される美談に次ぐ美談はもはや媚談、スピードが命の報道機関によってスピーディーに消化されるのが大人物の命、報道を取るか人道を取るかは運命ならず人命の分かれ道。
つらつらとうらみつらみのごとく述べてはきたが、情報処理からの情動処理に束の間を要する昭和世代が時代遅れかもしれず、今や個々人で情々酌量してピリオドを打ったら顔に無表情を貼り付ける機械化の時代、AI美空ひばりが国民的舞台で実演したのも記憶に新しく、何かと「エモさ」がもてはやされるのも世の中の風向きに沿って感情の〈瞬間最大風速〉を求めてこそ?
ここでようやくの一言、そして題名にあやかった東京事変の言葉を添えて。
〈ブラック・マンバ〉よ永遠なれ。
「未来は不知顔さ 自分で創っていく」
多分あなたはそう云うと判っているのに
ほんのちょっとざわめいた朝に声を失くすの
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私はあなたの孤独に立つ意思を思い出す度に
涙を堪えて震えているよ
拙い今日の私でも
明日はあなたを燃やす炎に向き合うこゝろが欲しいよ
東京事変『スーパースター』