【まくら✖ざぶとん】①④⑨『壁画師バンクシー』
えー、彼も一時、此も一時、と云われる通り、日進月歩で移り変わる世の中を繰り返し振り返りたいのが年の瀬のこの時期、今年の個人的一大ニュースは匿名芸術家バンクシーの東京での活動疑惑の一択。
落語と落書き、「落」がつくもの同士の親和性はなきにしもあらず、『落書きラップ』に対するアンサーソングならぬアンサーまくらといえば「イエス・ノーまくら」じみるも、イエス・キリスト生誕を祝うクリスマスだけにイエスかノーの二択じゃ容易にくくりきれぬ一席をお届け。
落書きが迷惑行為とあらば素性は晒さず匿名人間として潜伏活動、犯罪者(=クリミナル)か芸術家(=クリエータ)が背中合わせのバンクシー、ちょうど公開中の映画『ルパン三世』のような怪盗もヒーローになり損ねる現代コンプラ社会においては〈芸術テロリスト〉こそが唯一無二の義賊。
あらゆる落書きが乗せられるのが残るか残らぬかの当落線、砂絵や氷の彫刻に黒板アート、儚く消えるのも芸術の魅力のひとつとあらば消されたら消されたでそれはそれ、昔と違って今は屋外のポップアートもアップロードしてポートフォリオに入れられる夢のようなデジタル・ファンタジー。
メッセージ性が強くクオリティも高いグラフィティ・アートは犯罪行為を越えた地下活動のパブリック・アートとしてクオリファイ、落餓鬼(=ストリート・ギャング)から壁画師(=グラフィティ・アーティスト)へのジョブチェンジならぬクラスチェンジはさながらファイナル・ファンタジー。
ちょうど公開中の映画『ジョーカー』のごときアンチヒーローの地位を確立すればどこの壁でも描き放題となる憧れのキャンバスライフ、それこそ大学生なんかが面白がりそうな諧謔に満ちたバンクシロースからのクリスマスプレゼントは毎年恒例のお楽しみ。
思い立ったが吉日!とばかりには決行できないのが屋外での作品制作、バレるかバレぬかもさることながら雨こそ文字面通りの天敵、荒天なら即バラシの条件下で一昼夜のうちにひっそりこっそり作り上げる壁画が完成すれば「完璧」ならぬ「完壁」、とある壁面に突如として芸術作品が現れるさまたるや、これぞまさしく青天の壁靂!