【まくら✖ざぶとん】⑤⑨『脱獄受刑者』野次馬鹿➌
列島に春の嵐が吹き荒れる中、世の中を揺るがす逃走事件が相次いで発生すりゃ野次馬鹿の出番だ出動で大出張、目的地は千葉ではなく愛媛の松山刑務所、脱走ゾウガメを追いかけたら脱獄受刑者も追わないわけにゃいかず。
拳銃で先輩巡査を殉職に至らしめた十九歳はアッサリつかまったが、窃盗罪で松山刑務所に服役中だった受刑者による車を盗んでの逃走劇はあれよあれよとアブー君越え、脱走カメに逃げる意識があったかは知らぬが脱獄犯には逃げる意志のみ。
その逃げ様たるや忍者虚鉄もビックリ、車を捨てたら島から島へええいと遠泳、潜伏したのが空き家なら空き船もあるはず、〈♪盗んだボートで漕ぎ出した・行き先も解らぬまま・暗い夜の帳りの中へ♪〉、あえなく転覆したらまた泳いで点々と浮かぶ島々を転々と点つなぎ。
類も例もない逃走劇はすぐにでも映画化に向けて動き出すべき、逃げるは恥だが「役」になるも警察より先に見つけて密着するドキュメンタリーは逃走幇助で捕まりかねずドキドキメンタリティ、ど・れ・に・し・よ・う・か・な?と選んだ小島でバッタリ鉢合わせたら万々歳、宿がなけりゃ空き家で脱獄犯の追体験、逃走経路の妄想を肴にすれば酒も夜もあいていく。
九州に島奔西走したら辿りつくのは大分県、別府温泉で脱獄からの地獄めぐりは言いたいだけの一択、監獄を脱け出して尊厳の原点シャバの天国から逃避行した源泉ジャバジャバの別府地獄は一から十まで湯気に曇った桃源郷。
本州に上陸するなら広島を避けて山口県か岡山県、北上して山陰にしばらく隠遁してみるのも一手、追手が迫ったら日本海沿岸に漂着していた北朝鮮の木造船に乗り込んで、東洋の彼方へ漕ぎつけんと一か八かで決死の逃亡命。
海を渡ったフリして四国に引き返したら香川県、袈裟着けて編笠かぶった変装で虚無僧になりすまして八十八カ所お遍路するのも一興、その姿なら無口でも尺八吹けば施し受けられ当面は一も二もなく尺を稼げる灯台下暗し。
事実は妄想よりも奇になるかが気になるが、瀬戸内海に浮かぶ島々を舞台に、愛媛と広島、両県の警察が捜査員を総動員した人海戦術を覗けただけで野次馬鹿の撮れ高ならぬ見れ高は十分。最後は歌の続きをデュエット。
♪誰にも縛られたくないと・逃げ込んだこの海に~
自由になれた気がした・受刑者のボク~♪
※事件詳細
えー、「一字千金」という故事ことわざもありますが、【まくら✖ざぶとん】を〈①⓪⓪⓪文字前後の最も面白い読み物〉にするべく取り敢えず①⓪⓪⓪作を目指して積み上げていく所存、これぞ「千字千金」!以後、お見知りおきを!!