【まくら✖ざぶとん】①③⑥『自殺大国』
えー、なにやら九月一日に自殺する子供が多いらしく、来たる九月十日の〈世界自殺予防デー〉からの〈自殺予防週間〉にちなんで今宵は「自殺」をテーマにした一席をお届け。
日本の自殺率には諸説あれば紆余曲説もあるようだが、世界屈指の〈長寿大国〉でありながら十代から四十代の死因第一位が「自殺」たる〈自殺大国〉という矛盾構造じみた二面性を抱える日本、肉体の健康さえ維持すれば平均八十年は生きうるのに精神の健康を病んで手ずから命を落とす日本人。
一口に自殺といってもその方法は多種多様、ハラキリ切腹で腹を割ったのは昔の話、首吊りの窒息死に手首切りの失血死、飛降りに飛込みは出血性ショック死、集団で連帯しての練炭自殺や薬物の過剰摂取は中毒死。
海に向かって突き進めばそれは入水、水を吞んで波に吞まれて溺死すればシーサイドのスーサイド、湖のレイクサイドならマーダーケースとか言いたくなるのはとんだサブカル脳、浮かび上がった水死体が「土左衛門」などと呼ばれていたのは昔の話、警察用語なら〈青鬼〉。
森に向かって迷い込めばそこは樹海、一心不乱に歩き回った末に餓死すれば後始末はなくなれど後腐れはなくならず、後は腐っていくだけの腐乱死体は警察用語なら〈赤鬼〉、大地に還って白骨化していく姿を「骨皮筋右衛門」などと呼びたくなるのはとんだザブトン脳。
〈青鬼・赤鬼〉退治ならぬ回収に出掛ける警察官は桃太郎ならぬ桜代紋の桜太郎、なんて言葉遊びはさておき、若年層の自殺率の高い日本が〈自殺大国〉である理由のひとつは〈いじめ大国〉でもあること。
学校を出ても「イジメ」はなくならず社会に出たら「パワハラ」に名前が変わるだけ、下には下、下請けには下請けを見つけて苛むのが日本社会の〈俗物連鎖〉。劣悪な環境からは大人も子供も忍者・虚鉄さながら逃げるに限るが、泣き寝入りしたくなければ取るべくは時代に応じた対抗手段、イジメやパワハラはあえて現場の惨状を余すことなく記録して拡散するが吉。
暴行煽り運転者や暴言呷り政治家が馬脚をあらわし失脚したのも録られた映像や音声があってこそ、味を占めて度を越した相手の逆手をとった裏工作で採った証拠を〈悪肉善食〉のネット空間に晒すや、悪者には正義感に満ちた匿名人間から援護射撃の集中砲火で批難轟轟、社会的制裁で一泡吹かせてから然るべきところに訴えりゃ、事態は一転してくるりと好転で立場逆転。
決めゼリフは直近の流行語になぞらえて、
「テープ録っとったんやで」
これぞまさしく、(世に)問うは一時の危機、問わぬは一生の危機!!