【まくら✖ざぶとん】①⑥②『低反発まくら➊〈親子丼〉』
そんなこんなでコロナウイルスの流行り病もいよいよ本格化、ロックダウンのゴーストタウンが世界のあちこちに広がるゴーストワールドはさながら世紀末の様相、まさに世も末のこんな時期だからこそ書きたいのが散文、散文たるもの読んで字のごとく気が散る文章にして気を散らす文章、コロナ情報の収集に忙しいこの時期にゃ堅苦しい物は読みたくないし書きたくもなく、かといって何もしなけりゃ噺家が廃るってわけ。
世の中が緊急事態の自粛生活ならまくらも新規形態で特別営業、それこそ本家本元の落語まくらのごとき世間話に与太話、身の上話によもやま話…身の回りの取るに足らぬ出来事を集めてからちょっとだけ誇張して箇条書きっぽく過剰語り、いざ読み終わってもはねっ返りがなく何を読んだか手応えがなさそうな小噺とくれば、名付けてみたよ「低反発まくら」。
散文はカタカナにすればエッセイ、noteを覗けばわかるようにエッセイをたしなむ書き手の多いこと多いこと、巷の流行りは感情だだ漏れでエモさ満点のエモッセイだがこの「低反発まくら」はエッセイとは似ても似つかぬ「似ッ非イ」、形式から何から旧来のまくらと比べて規格外すぎての企画倒れとはならぬよう語り口はそのまま。よもやま話は「四方山話」と書く字の通り、あっちこっちやそっちどっち?にっちやさっちにもいけばもうしっちゃかめっちゃか、四方八方に逸れて飛んでもお後よろしければすべてよし!
てなわけで噺が当たり前のように逸れた先は先日の夕飯に食べた親子丼、親子丼といったら鶏・卵かサーモン・イクラのほぼ二択、タラやカニもあるようだがもっとありそうでないのが親子丼。親子じゃなけりゃいとこ丼も姪っ子丼もなく味はあっても素っ気ない他人丼、親子以外は漏れなく他人で血のつながりこそがすべて、親子丼ありきの他人丼はまさに血と涙しかない呼び方で味気なし、せめて他人は他人でも魚介類が一族郎党のごとく集まった海鮮丼のことは「サザエさん丼」とでも呼んだらどうか、なんて思ったことをサモありなんとイクラでも口に出せちゃうのがこの「低反発まくら」。
噺を戻して夕飯の鶏と卵の親子丼に添えてあったのはうずらの卵を揚げたフライ、魚介類をまるっと集めたのが「サザエさん丼」なら鳥類は鳥類でその習性を有効活用、〈鶏の親子に混ざったうずらの卵〉といったらオチに何を企んどるかわかった方はそう御名答、その名も「親子托卵丼」ってことで、お後はもとよりお味もけっこうな御点前で御馳走さま!