鑑定・査定人工知能”MEKIKI”を開発しているいくつかの理由②
2019年12月2日に1年半の開発期間を経て、鑑定士サポートアプリ「MEKIKI」をローンチしました。私自身リユース業界で20年以上鑑定士をしています。自身の体験の中で感じた「いま、リユース業界・鑑定士に必要なことは何か?」の想いがこの人工知能MEKIKIには詰まっています。単にAIによる鑑定・査定を実現したいという思いだけではない理由を書いてみたいと思います。
結局、それは「人」なんだと言う「一周回る必要もない」事実
入りづらいお店と言うのがある(あくまで、個人的に)。
その気持ちの源泉がどこにあるのか?は言語化が難しい。例えば、コンクリート打ちっ放し的なお洒落そうなセレクトショップや、ガラス張り全開で観葉植物多めのお洒落そうな美容室。どうも入りづらい。
例えば路地裏にある「一見さんお断り」的な小料理屋さんや、カウンターだけっぽいこだわりのありそうなお寿司やさん。どうも入りづらい。その心は?
(妄想)
モッズコートが欲しい。なんかの雑誌の表紙で見て、10代の頃憧れていた"THE WHO"を思いだし「大人になったし、今なら似合うかもしれんのぉ」と思い博多へ買い物へ。西通りから少し入った路地にお洒落そうなガラス張りのセレクトショップを発見。ショーウィンドウに黒のモッズコートが掛けてある。目の前を3回通り過ぎ、気合を入れて4回目にお店に入る。意識的には「俺いつもセレクトショップでセレクトしてますから」的な空気を出すことを自分に何度も言い聞かせる。一見無愛想に見える店員さんは、そのまま無愛想。「これ試着して見て良いですか?」とすぐに言うと舐められそうなので、みる気もない洋服を5分程度見る(この時間、ユーザーサイドでは5分とは思えないくらい長く感じる)。意を決して「このコート試着して良いですか?」と聞いてみる。「良いですよ@店員」(そりゃそうだ)
店員さん「このコートは80年代のディテールを忠実に再現していて、◯▲×◯▲×◯▲×◯▲×◯▲×。ジーパンにトリッカーズなんかを合わせてもらうと鉄板ですね」
「はぁ」と言いながら試着してみるも、チラリと見た値札を見て貧血に。
10万円近い(この時点でもう買う気はない)
頭の中では「どうこの場を切り抜けるか」しかなくなり、もはや似合っているのか、サイズ感はどうなのかなんて全く意識できない。
結局、それは「人」なんだ。
店員さん「いらっしゃいませ(出来るだけ柔らかく)。うちの店初めてですか?」
私「はい。そーなんです。」
店員さん「初めての人には入りにくいですよねー」
私「そーなんですよ。僕も4回入るかどうか迷いましたもん!」
店員さん「ですよねー」
このオープニングトーク、これがあるだけで救われる。その後もきっとポジティブな会話が弾み、モッズコートを買わないまでも「また来ますね」で別れることが出来る。モッズコートのディテールに興味はない。この日、用があったのは「モッズコートを買って良いものか?俺のようなおっさんがそれを着こなすことが出来るのだろうか?」を安心して相談できる「人」なんだ。
残念ながら、これってほとんどの質屋、買取専門店に当てはまるUX(ユーザー体験)ではないだろうか?私たち鑑定士が身につけるべきスキルは「目利き力」と「コミュニケーション能力」です。
「目利き力」これは日々変わります。流行の移り変わりが早いと言うだけでなく、中古品の売り先がグローバル化している現在において、常に新しい相場を全てのジャンルで学び続けることは残念ながら不可能に近いと思います。
それを補完できるテクノロジーを創り出したい。そう言う思いで人工知能「MEKIKI」を開発しています。鑑定士の「鑑定ストレス」を軽減することで、お客さんの納得感を醸成する「コミュニケーション」に集中するために。だから私たちは「MEKIKI」のことを「鑑定サポートアプリ」と呼んでいるのです。
で、それ使って実際どうなの?の話は次回。