すべて真夜中の恋人たち
いままで読んだもので1番好きな本の出だしを。
真夜中は、なぜこんなにもきれいなんだとおもう。
それは、きっと、真夜中には世界が半分になるからですよと、いつか三束さんが言ったことを、わたしはこの真夜中を歩きながら思い出している。
光をかぞえる。夜のなかの、光をかぞえる。雨が降ってるわけでもないのに濡れたようにふるえる信号機の赤。つらなる街灯。走り去ってゆく車のランプ。窓のあかり。帰ってきた人、あるいはこれからどこかへゆく人の手のなかの携帯電話。
真夜中は、なぜこんなにきれいなんですか。真夜中はどうしてこんなに輝いているんですか。どうして真夜中には、光しかないのですか。