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失恋を受け入れた女の強さ《光る君へ21話》

さてさて、ここまで3本、自分の話をしてきましたが、ちょっと箸休め。今回は絶賛ドハマリ中の『光る君へ』に想いを馳せたいと思います。

 今回の21話。前半のクライマックスという内容でした。
中宮定子の出家→伊周大宰府強制送還→高階邸火災と定子懐妊→枕草子爆誕→道長とまひろの逢瀬→越前へ出発
文字にしただけでもあわただしい約40分!!!
盛りだくさんな21話。でもやはり、道長とまひろの10年越しの逢瀬が一番、心がぎゅっとなります。なんたってこの二人、これまでずっとすれ違ってばかりだったんだもの!!!

 今回の逢瀬、愛の矢印が逆を向いたことが、これまでと大きく違うのが特徴的です。まひろ、本当は道長への想いに訣別する覚悟ができたから会いに来たんですね。

 若き日は、情熱的に、時には強引にもまひろを求めていた道長。しかし、年を重ね、背負った為政者としての立場はもう、彼の中に染みわたっています。淡い水色の衣裳をまとっていた道長が、野心家で策略的な父と同じ柄で濃い青の衣裳に身にまとっているところに、その変化が演出されています。廃屋に来た道長は、右大臣殿(今や左大臣ですが)のままです。しかしさすがソウルメイトまひろ。昔の彼がちゃんと残っていることを見抜きました。それは彼の心を溶かし、道長はみるみる三郎になります。ここの柄本さんの表情、声、佇まいの変化の芝居が全て完璧です。

 三郎となった道長をみて、まひろは愛おしさマックスです。今までなれば、道長が弱音を吐けば、鼓舞していていたでしょう。しかし、今回は否定も肯定もせず、その弱音を受け入れた返事をするところに、愛を感じました。このあたりから、道長の「アレ、なんか今日のまひろ違う」な表情がまた素敵です。そして、愛おしさは、ついにまひろから道長の肩に頬を寄せるという行動を起こさせました。

 話の途中ですが、柄本さんの細かい芝居には、毎話感服します。柄本さんの道長には、大人になっても幼い頃の「ぼーっとして、優しい、ボンボンな坊ちゃん」が下敷きにあります。その上で、内裏(仕事)の時、友といる時、嫡妻倫子さまといる時、妾明子さまといる時、姉女院さまといる時、そして最愛の人まひろといる時、全て表情やしぐさ、声さえ絶妙に違います。イケメンなわけではない(失礼)し、全然頼りないし、何考えているかよくわからないし、正妻がいて妾もいて子どももいて、現実にいたらクズ確定なのに、どことなく溢れる色気に品があり、魅力的で、全然クズに見えません(笑)
さすがだなぁ。柄本さんの計算された演技には、本当に唸らされております。

話を戻します。笑

 大人になった道長は「これ以上まひろの近くには寄れない」と、一線をわきまえようと葛藤している様子が伺えます。まひろを看病した時や、為時が任官のお礼に来た時の態度などで、まひろへの恋心に蓋をしているのが伝わります。今回の逢瀬でも、まひろとの距離の取り方、目使いでその意志が見えます(その一方で、会って早々「字を見てまひろが書いたと分かった」と話す声と表情に、せき止められない想いをにじませているあたり、芸が細かく良いです)
 それもそのはず、道長は、2度もフラれ、兄が狙ったことを知り、命を晒して必死の看病をしても文が来るわけでもお礼を言ってもらえるわけでもなく、会ってもスルーをされてしまい、さらには自分を飛び越え帝に謁見し意見まで述べたことをなんと帝から聞かされます。自分の手の届かないところにまひろはいて、一度もその想いが報われることなく11年が経ってしまった。「自分たちは特別な関係ではない。今でも想っているの自分だけ…」と想っていても、無理はありません。

 一方、まひろはというと、道長と全く逆です。自分の送った漢文を大切に持っていることを知り、流行り病の自分を助け徹夜で看病したと聞き、民のための政治をしようとしていることを耳にし、(父の実力とまひろの行動が、任官に繋がったのではありますが)父の出世まで助けてもらいます。終には父に指摘をされ、ことあるごとに、道長の自分への想いを実感してきました。それにともなうように、大人になっていくまひろは、未来や世間など関係なく、素直に自分の心(道長への想い)を受け入れることができるようになっていきます。(17話~21話、吉高さんの表情や声の出し方に葛藤と変化が良くあらわれていて、素晴らしいです。)
 
 そして、まひろが自ら道長に寄り添ったことは、道長に心の蓋を開ける(踏みとどめてた境界線を超える)ことを許しました。道長は、応えるように力強く抱きしめます。まひろは、一瞬戸惑うもすぐに微笑み、ずっと隠してきた道長への想いと、自らの意志で、生まれ変わること(=想いにけじめをつけること)を伝えます。覚悟を決めているまひろは今までになく積極的に、彼の頬に手をあて、キスをし…(その後は視聴者それぞれの解釈にお任せを。笑)

 本来、まひろは自分がこうだ!と思うと一直線に走っていくところがあります。友の死を通して始まった道長との身分を超えた恋は、幼いまひろが覚悟を決めるには高度過ぎたのでしょう。会えなくなった11年間に彼からの愛を感じ、諸行無常を経験したことが、まひろの道長への想いを確かにさせました。そして、目の前にはもう戻れない過去と、憧れの遠くの国と宋人との出会いが待つ未来があります。道長への想いに素直になり、そしてけじめをつけ、次に進む。覚悟が決まったまひろは、今までで一番かっこよく美しかったです。

と、想いスッキリにスッキリに旅に出るまひろちゃんと対象に、ドロドロな都に残された道長くん。11年越しに、自分の想いが一方通行ではなかったことに気づかされ、それでも、彼女のことは手に入れることはもうできません。彼の心には、これまでよりも強く、まひろが住み着くことになるでしょう。来週からの道長の様子がまた楽しみですね。

P.S. 画像は、NHK公式より引用させていただきました❁



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