じゃあ、どうすればいいの?がふつふつと。ーラストマイルー
先日、公開されたラストマイルを観てきました。
ネタバレをくらう前に!といそいそと手帳を見たところ、、、今週行くなら月曜日だな…ん?月曜日は少し安いぞ?お、レイトショーもあるぞ??勢いで日曜日の朝に予約しました。おかげで今日はなんとか残業を早く上がるべく、週明け初日からエンジン全開。めっちゃ疲れた…。
ここからは、作品の余韻に浸りながら感想をつらつらと書いていきますので、ネタバレ回避の方はそっといいねしてから(?)閉じてください笑
近年、すさまじい勢いで成長した物流業界。
厳しい配送ノルマ、低賃金、高齢化による労働世代の減少により、ドライバーの人材不足は深刻です。実際に生活の中でも、前よりも時間を要して届くことが増えたなと感じます。物流とは少し異なりますが、郵便の日数超過やバスの減便なども起きていますね。今の世の中には欠かせない便利な物流ですが、最先端の人達はかなり厳しい環境下に置かれているのが現実です。
この映画。そんな物流における現代社会に対して一石を投じる作品かと思いきや、それを超えた「一生懸命働くとは何か」という「内面」へのメッセージが強いものでした。ドラマの延長にある映画作品の場合、一般的にスケールが大きくなり、より壮大なテーマになることが多いですが、今回はむしろもっと身近になった印象です。ラストマイルにおいては、MIU404とアンナチュラルと同一世界のお話ということで、ドラマの映画化とはまた違いますが、少なくてもMIUの後半のサイバーテロ諸々の方が映画らしかった気もします笑
より集中環境が整い、より迫力ある映画で、舞台はよりダイナミックに、内容はより身近にすることが、より胸に刺さりやすくしている。制作陣の考え抜かれたアプローチに頭が下がりました。
今回の事件の発端は、5年前に起きた1人の社員、山崎佑の事故であり、自殺であり、事件。そして、爆発物を仕掛けた犯人は、その社員の恋人でした。山崎は、仕事により精神を病んだことでこの事件を起こしてしまったし、仕事で病んだ彼を愛していたからこそ、恋人はこの爆破事件を起こすことになります。そして、犯人はこの連続爆破事件の最初の爆発で、唯一亡くなりました。自ら爆破を起こし受け止め焼死となりました。二人とも、実行時の精神状態は正常ではないことは一目瞭然です。
一方、この事件に巻き込まれていく登場人物たちはどうでしょうか。
彼らも、一歩間違えれば、二人と同じような状態になっていてもおかしくないように思われます。
実際、主人公のエレナ(満島ひかり)は昇進して3年目に不眠となり病休、部下の孔(岡田将生)も前職を勤務状況の劣悪さで退職しています。この事件によってDAIRY FAST(舞台の物流センターを保持する)から被害を押し付けられこととなる郵送会社羊急便の関東局局長の八木(阿部サダヲ)も、後半は極限状態になりつつありました。自暴自棄になりたばこが止まりません。郵送の最前線で働く佐野亘(宇野祥平)は誇りを持って勤めていた会社が倒産したことで、運送ドライバーとなりますが、その苦労からか生気がない様子です。父が熱心に見習えと言う前のペアだった人が、最後は働きすぎて亡くなったことに、ついには怒りをあらわすこともありました。そして、2児のシンブルマザーである松本里帆(安藤玉恵)も、夜は(おそらく)母親に電話で弱音を吐き泣きながらも、母として働く人として一生懸命でした。娘にあたってしまうこともありました。今回(どちらかというと)悪として描かれる五十嵐道元(ディーン・フジオカ)も同じです。組織の人間としての勤勉に働いたことが、山崎佑を追い込み、自身もずっとそれを抱え込みながらもなんとかやってきたことが伺えます。
皆、ギリギリライン。働いて生きる、それだけに必死な状況であることが丁寧に描かれています。最後に退職したエレナがタクシーで爆睡した姿を見せるところは、エレナが本当の意味でやっと休めるのでしょう。対象に、エレナのポジションに上がった孔は、逃げていた仕事による精神の重圧とこれからは対峙していかなければならなくなります。
合理的で利益追求を第一に考える資本主義。ホワイトカラーとブルーカラーの立場の相違。私たちは、私たちの便利な生活と金銭的な潤いのために、誰かを追い込んでいる、むしろ追い込まれることが重々にあり得る世界で生きており、これからも生きていかなければなりません。
じゃあ、どうすればいいのか?
どうやってこの止めることができない日常を生き抜くのか?
きっとこの答えのない大きな問題が、ラストマイルが私たちに提示しているメインの社会問題ですね。野木さんらしい。
そして、合わせて伝えてくるこの仕事と心の問題。
努力も惜しまず、失敗も許さず、頑張ることを美徳とし、自分よりも他人優先。それがこれまでの日本の社会を支えてきたことは確かですが、今は時代が便利になりすぎました。とにかく「時間」がなんでも速すぎる。それが当たり前すぎています。人がついて行くことのできない程進んでしまったこの「速さ」に、日本人らしい精神は喰われてしまいます。それが、先ほど記載した「じゃあ、どうすればいいのか?」「どうやってこの止めることができない日常を生き抜くのか?」に繋がるのですが.…難しい。
たくさん、考えさせられる台詞が出てきた本作ですが、個人的にはエレナの言った「使っているつもりが、いつの間にか使われるの」という台詞が心に残っています。
映画に限らず、良い大衆娯楽というのは、楽しいところだけにとどまらないものだと思います。この作品を観て、私たちは何を思い、どう考えるのか。少しでも多くの人がそのように思いを巡らせることをしていると良いなぁなんて思いました。
全然まとまらなかったけど、鑑賞後のホヤホヤの記憶はやっぱりとどめておきたいからね。もう一度見たらまた違う見え方すると思うから、もう一回映画館に行きたいと思いつつ.…!!
p.s.
満島ひかりちゃん、顔小さすぎ!!可愛い!!独特な間と空気は満島ひかりにしか出せないって再実感しました。
岡田将生は「社会に冷めたひねくれ者だけど実は一番ピュア」な役をみんなやらせたいんだね~って思った。
阿部サダヲの現場上がりの日系サラリーマン中間管理職のハマり具合が凄い。
以上、他にもたくさん書きたい役者さんいるのだけど、これぐらいして…
あ…そういえば予告のスオミの長澤まさみ様が美しすぎました…。