めいのぼやき50 余詰消し入門(3)
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
詰将棋を創作する上で余詰を消すのは大変な作業です。
しかし、他人に自作を解いてもらう上では避けて通れません。
「余詰消し入門」と題して、余詰を消す問題を出します。
今回が第3回です。
詳しい創作のルールは下記のリンクをご覧ください。
問題
【 第1図 】
第1図は作意手順が
43龍 迄1手。
の詰将棋です。
しかし、
43歩成、23玉、14龍 迄3手。
という余詰が成立しています。
攻方25銀を別の種類の攻方駒に置き換えて、余詰を消してください。
※3手以上の詰将棋における最終手余詰は許容されますが、1手詰の場合は許容されないのが慣例となっています。
☆ 解答・解説は下へスクロール ☆
解答・解説
< 解答 >
【 第2図 】
「25歩」と置き換えるのが正解です。
< 解説 >
(1) 玉方42歩を追加
第3図は第1図から1手目43歩成とした局面です。
【 再掲第1図 】
【 第3図 】
1手目43歩成を潰すために、43の地点に玉方の駒を利かせる方法から考えてみます。
例えば、第1図に玉方42歩を追加で配置します(第4図)。
これで1手目43歩成には同歩で詰まなくなります。
【 第4図 】
玉方42歩を追加で配置した図において、1手目43龍とする作意手順が潰れていないかを確認してみます。
1手目43龍は同歩と取られて詰まなくなってしまっているのが分かるでしょうか(第5図)。
【 第5図 】
1手目43歩成も43龍も同じ43への着手なので、43の地点に歩を利かせるのでは、都合良く余詰だけを消すことはできないのです。
(2) 玉方45飛を追加
第1図に玉方45飛を追加で配置するのはどうでしょうか(第6図)。
【再掲第1図】
【 第6図 】
これで1手目43歩成には同飛で詰みません(第7図)。
【 第7図 】
1手目43龍とする作意手順は、攻方44歩が玉方45飛の利きを遮っているので、問題なく成立しています(第8図)。
【 第8図 】
しかし、余詰を消すために駒数を増やすことになってしまいました。
もっと効率の良い余詰の消し方はないのでしょうか?
(3) 配置の平行移動
別の方法を考えていきます。
1手目43歩”成”を成立させず、1手目43龍だけを成立させる都合の良い方法は他にあるでしょうか?
第1図の配置全体を一段平行移動させれば解決します(第9図)。
【 再掲第1図 】
【 第9図 】
配置を平行移動させたことで、1手目44歩”成”とはできなくなりました。
1手目44歩は王手にならないので、余詰は消えてくれました。
もちろん1手目44龍とする作意手順は成立しています。
これで「44龍迄1手」の1手詰が完成しました。
符号は変わりましたが、作意手順の本質は変わっていません。
実際の創作ではこれで十分なのですが、今回の問題設定ではそれができません。
攻方25銀を別の種類の攻方駒に置き換えて、余詰を消さなければなりません。
(4) 玉方22桂に変更
【 再掲第1図 】
< 作意手順 >
43龍 迄1手。
< 余詰手順 >
43歩成、23玉、14龍 迄3手。
ここまでの状況を整理してみます。
配置を平行移動させたり駒を追加配置したりせずに、1手目43歩成だけを潰すのは難しそうです。
そこで余詰手順の3手目14龍を潰すことを考えてみます。
攻方25銀を別の種類の攻方駒に置き換えれば、余詰手順の3手目14龍が潰れてくれるというのが問題の趣旨です。
どういうことなのでしょうか?
第1図から「43歩成、23玉、14龍」と進めた局面を見てみます(第10図)。
【 再掲第1図 】
【 第10図 】
攻方25銀が14の地点に利いているために、3手目14龍が成立してしまっているのが分かるでしょうか。
攻方25銀を14の地点に利かない駒に変えればいいわけです。
3手目14龍に対して同玉と取って詰まなくしようということです。
置き換える候補は「25歩」「25香」「25桂」「25飛」になります。
正解は一つだけです。
少し話が脱線しますが、
「第1図で玉方22歩を22桂に置き換えたらどうか?」
と思った方もいるかもしれません(第11図)。
これまで玉方駒の利きで余詰を消してきたので、慣れてきた方はピンときたかもしれません。
【 再掲第1図 】
【 第11図 】
第11図から「43歩成、23玉、14龍」と進めたときに同桂で詰みません(第12図)。
14の地点に玉方の駒を利かせることで、余詰手順を消したということです。
【 第12図 】
今回の問題設定では正解ではありませんが、実際の創作ではこれも十分に有力な手段です。
(5) 攻方25香に変更
さて、話を戻します。
そもそも攻方25銀はなぜ配置されているのでしょうか?
作意手順における攻方25銀の役割を確認しておきます。
第13図は第1図から1手目43龍とした局面です。
【 再掲第1図 】
【 第13図 】
攻方44歩は43龍に紐を付ける役割、玉方22歩は逃げ道を塞ぐ役割を果たしています。
そして、攻方25銀は24玉と逃げる手を消す役割を果たしています。
攻方25銀は34の地点にも利いていますが、そこには龍も利いています。
25に配置する攻方駒は34の地点に利いている必要はなく、24の地点に利いてさえいればよいのです。
まとめると下記のようになります。
< 今回満たすべき条件 >
① 24に利かせて逃げる手を消す。
② 14に利きがあると余詰が発生する。
③ 34に利きがある必要はない。
攻方25銀を何に置き換えたらよいかということで、先程候補として「25歩」「25香」「25桂」「25飛」を挙げました。
「25桂」では24の地点に利かせられないのでダメそうです。
従って、候補は「25歩」「25香」「25飛」に絞られます。
では、試しに第1図の攻方25銀を25香に置き換えてみます(第14図)。
【 再掲第1図 】
【 第14図 】
では、1手目43歩成としてみます(第15図)。
【 第15図 】
もうお分かりかと思いますが、1手目43歩成に23玉と逃げる手が消えてしまったために、1手目43歩成とした瞬間に詰んでしまいます。
攻方25飛と配置しても同様です。
1手目43歩成としたときに逃げられなければ、3手目14龍を潰した意味がなく、依然として余詰は残ったままになってしまいます。
(6) 攻方25歩に変更
これで満たすべき条件は揃ったでしょうか。
< 今回満たすべき条件 >
① 24に利かせて逃げる手を消す。
② 14に利きがあると余詰が発生する。
③ 34に利きがある必要はない。
④ 23に利かせて逃げる手を消してはいけない。
これらを同時に満たすには攻方25歩と置き換えるしかありません(第2図)。
【 再掲第1図 】
【 再掲第2図 】
これで「43歩成、23玉、14龍」としたときに同玉で詰みません(第16図)。
【 第16図 】
もちろん1手目43龍とする作意手順は潰れずに成立しています。