フェアリーつくったー選手権
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
先日、上記のツイートをして、フェアリー詰将棋(変則ルールの詰将棋)を募集しました。
有難いことに何人かにご協力いただけたので、作品を紹介したいと思います。
フェアリー詰将棋をよく知らないという方も、これを機に是非知っていただければと思います。
1.協力詰
(1-1) springs 作
【 協力詰 】 先後協力して最短手数で受方の玉を詰める。
普通の詰将棋として考えると、到底詰みそうにありません。
これは「協力詰」という変則ルールの詰将棋です。
普通の詰将棋では受方は詰まされないように抵抗します。
しかし、協力詰では受方は自分が詰まされるような手を指します。
もう少し正確に言うと、受方は”最短で”詰まされるような手で応じます。
本作は21飛不成~22飛不成と連続不成で、受方11玉・攻方22飛の形に誘導します。
これで12金と持ち駒の金を打てば詰め上がりです。
4手かけて初形の攻方23飛を1マス前に進めただけの形にするわけです。
初手21飛”成”すると、王手を解除するには同玉あるいは同龍とするしかありません。
しかし、初手21飛”不成”とすれば、12玉と逃げて王手を解除する余地が生まれます。
同様に3手目22飛”不成”も11玉と逃がすための手です。
ところで、大駒不成は普通の詰将棋だと打歩詰が関わってこないと出てきません。
協力詰なら玉を誘導する目的で大駒不成が自然に出てきます。
「受方が詰みに協力する」というルール変更が生んだ手順です。
(1-2) くろかず 作
23角不成~12角不成と大駒の連続不成が出てきます。
やはり玉を誘導するのが目的です。
角がジグザグに進んでいくのが面白く、最後は”成”で締まった感じがします。
(1-3) 駒井めい 作
自作です。
初手54飛の限定打や3手目63桂不成は、最終手51飛成を見据えたものです。
63桂”不成”とすることで51龍に紐をつきます。
桂馬をそっぽに不成で動かすのが狙いです。
普通の詰将棋でも時々見られ、協力詰でも当然表現できます。
2.協力自玉詰
(2-1) kisy 作
【 協力自玉詰 】先後協力して最短手数で攻方の王を詰める。
今度は「協力自玉詰」というルールになります。
「先後協力して最短手数で詰める」という点は変わりません。
しかし、「受方の玉」を詰めるのではなく「攻方の王」を詰めるのが目的になります。
攻方から指し始めるのですが、2手なので受方が何を指してくれれば攻方の王が詰むかを考えてみます。
そうすると、27桂”不成”と香の利きを通しながら両王手をかければ、攻方の王が詰むことが分かります。
27桂”成”と開き王手をすると、17桂と受ける余地があって詰みません。
受方に27桂不成を指させるためには、攻方28香で王手をすればよさそうです。
そのために攻方25桂を動かすことになりますが、
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・13と33のどちらに動かすか
・成か不成か
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と計4通りの選択があります。
初手13桂成・13桂不成は、受方11香の利きを遮ってしまうので論外です。
初手33桂”成”はどうでしょう?
香と成桂の両王手になっていて、2手目27桂不成が指せません。
正解は初手33桂”不成”で、受方への王手は香でしかかかっていないので、2手目27桂不成が指せます。
受方に移動合をさせるために、あえて両王手をかけないわけです。
(2-2) 雲虚空 作
「フェアリー詰将棋を作るのは初めて」と嘘をついている作者ですが、お手本のような作品を投稿してくださいました。
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・1手目の香打が19に限定される
・4手目の同銀が不成である
・5手目の角引が不成である
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この3手の本当の意味が詰め上がりで判明するという構成になっています。
詰め上がり図を見てみると、
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・1手目の香打が19に限定される
→ 攻方王が19へと逃げるのを防ぐため
・4手目の同銀が不成である
→ 成桂を支えつつ、攻方王が29や39へと逃げるのを防ぐため
・5手目の角引が不成である
→ 成桂を取って王手を解除するのを防ぐため
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という意味付けになっていることが分かります。
3.おまけ
(3-1) 協力詰…?
U谷のこどもたち 作
攻方の1手で詰むので協力詰である必要はなく、しかも普通詰将棋とのツインにもなっています。
要は、詰将棋に詳しい人にしか伝わらない高度なギャグなわけです。
あまり真面目に考えないように。
前衛的すぎて私には何が何んだか分かりません。
とにかく私が募集ツイートをしてから僅か3分で反応してくださったので、「RTA部門優勝」の称号を与えたいと思います。
ちなみに、本作の詰め上がりを真面目に協力詰にするなら、例えば下記のように作れます。
上谷直希 作
フェアリー時々詰将棋 5手ばか詰の手筋(1) 例題
2016年1月18日
http://fairypara.blog.fc2.com/blog-entry-29.html
U谷のこどもたち氏も実力のある作家で、当然このような手順は頭にあったでしょう。
あえてクソボールを全力で投げてくるところは、色んな意味で流石としか言いようがありません。
(3-2) 双方大駒不成3手
どうせ双方不成にするなら大駒かつ最短手数で…というのは詰将棋作家なら自然な発想でしょう。
どうやら相馬慎一氏が以前協力詰で作ったことがあるようです。
相馬慎一 作
構図が限られるのか、実力のある作家が作ると見事に同じような構図に辿り着くようです。
さて、他に構図はないのでしょうか?
また、協力自玉詰だとできる気がしないのですが、本当に不可能でしょうか?