WFP2023年8月号 感想
バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
Web Fairy Paradise 2023年8月号(第182号)の感想を書いていきます。
1.レトロの表記と細則
(pp.3-4)
fmzaにレトロ協力詰の解析機能が実装され、Onsite Fairy Mateで公開されました。
レトロ協力詰の起源に詳しくないのですが、十中八九チェス・プロブレムのRetractor(特にHelp Retractor)を輸入したものでしょう。
2.第152回WFP作品展結果
(pp.16-37)
WFP作品展鑑賞室:http://k7ro.sakura.ne.jp/wfp/EnjoyWFP.html
152-4 たくぼん作
初形に攻方王がいない協力自玉詰。
歩合・歩打・歩成がこんなに後に出てくるのは驚き。
152-5 占魚亭作
初形に攻方王がいない協力自玉詰。
ルールの複合により開王手以外の方法で攻方王を生成。
152-6 さつき作
衝立詰の最長手数記録を大幅更新。
取らせるための銀を設置するのが、本作の最も重要なポイント。
それに龍追いや剝がしといった普通詰将棋でしばしば用いられる機構を融合。
見せられれば明快な機構だが、衝立ルールを活かしたこの機構を思い付いて実現したのは本当にすごい。
152-7 さつき作
・出題設定A:Lortap協力詰 9手
・出題設定B:Patrol協力詰 5手
① 出題図を初形にAで解く。
② ①の詰上図を初形にBで解く。
③ ②の詰上図を初形にAで解く。
……
と繰り返していくと、受方G以外の配置が左に1つずつずれていく。
新奇なアイデアで、まさにフェアリーらしい自由な作品。
152-8 駒井めい作
自作。
Take&Makeは駒を取って効果を発揮するルール。
従って、協力詰よりも協力自玉詰の方が作りやすい。
152-12 変寝夢作
解Aの飛2枚を同時に合駒する手が印象的。
3.第17回フェアリー入門解答
(pp.56-62)
① 駒井めい作
自作。狙いは擬ピンメイト。
詰上りの受方14角の状態は正確にはピンではなく、ピンのように見えるがピンとは異なる状態のため。
ちなみに、作者コメントで「”疑”ピンメイト」と書かれているが、これは私の誤字で正しくは「”擬”ピンメイト」である。
② springs作
取られる駒と詰める駒が解の間で入れ替わる。
チェスプロブレム用語を借りるならZilahiと呼ばれるもの。
受方銀の成生や移動先も異なっていて、対照性のある解になっている。
短評でも指摘されている通り、確かに復活した駒の差異がほしいのは同感。
しかし、他の部分が良いがために、この点が悪目立ちしているようにも思える。
作家目線で見れば創作難易度は高いはずで、これだけの内容と洗練度合いで仕上がっていることの方が個人的には驚き。
③ springs作
歩の原形消去。
その理由がキルケらしく、かつ作意に現れないのが良い。
味わい深い作品。
④ 羽毛布団作
攻方の角捨てに対して、受方は遅れて取る。
それは攻方にバッテリーを作らせるため。
角を時間差で取るこの手順が好感触。
⑥ springs作
キルケだと駒のアンピンと線駒のライン外への移動を同時にできる。
⑤ 神無七郎作
と金を歩に戻す、いわゆる原形生。
実現の仕方がスマート。
⑦ さつき作
金がしつこく復活するのが印象的。
4.アンチキルケ協力詰超入門
(pp.63-68)
springs氏がフェアリー入門の新担当に就任。
とのことなので、そうなることを願う。
5.今月の手筋
(p.68, 79)
自作。
合駒動かしは普通詰将棋の短編で人気の手筋。
それにフェアリーらしくアレンジした。
6.協力詰・協力自玉詰 解付き #15
(pp.70-77)
私の担当コーナー。
今回は創作課題も出しています。
15-1 springs作
受方飛の最遠移動×2。
それが香から銀に配置を変更するだけで現れる。
攻方王の移動先が縦横に使い分けられているのも良い。
15-2 せら作
角の連続合。
1回目は逆王手で、2回目が逆王手にならないように。
同じ角合でもこの違いが面白い。
15-3 かいりゅーになりたい作
利きが遮られないように飛車を打ち替える。
狙いが明快で好感が持てる作品。
今回出した創作課題を満たしているが、創作課題を決めた後に投稿された作品なので、本当に偶然of偶然である(もしくはエスパー)。
15-4 駒井めい作
自作。創作課題の例題。
15-5 かいりゅーになりたい作
攻方王周りの環境を一旦ぶち壊して作り直す。
15-6 せら作
攻方銀と受方銀がジグザグに動く。
最後にぴったりと着地するために、受方の初手でジグザグ運動の起点を一つずらす。
物理学における波の位相ずれのようだ。