バーチャル詰将棋作家の駒井めいです。
今回は詰将棋の「面白さ」について考察してみようと思います。
1.「面白い」って何?
という面白そうな論文(有料)を見つけたので読んでみました。
超ざっくり言うと、「”面白い”って何?」というのを社会学的な観点から論じたものです。
で、結論としては「予想を裏切られることで人は面白いと感じる」ということです。
詰将棋に当てはめて考えてみると、予想を裏切るような意外性のある手順や詰め上がりなどは確かに面白いですね。
当たり前のことを言っているように聞こえますが、こうやって言語化して意識することは大切だと思います。
2.「面白い」の分類
更に、「面白い」と人が感じる現象について、12パターンに分類できると論文では述べられています。
論文を引用しながら、詰手筋に無理矢理当てはめていきたいと思います。
今回扱った詰手筋は石川和彦著「詰将棋入門」に記載されているものです。
① 組織 Organization
・駒の連続活用
・駒の打替え
「手順の規則性」と解釈しました。
同じ駒を連続で活用したり、空いた地点に別の駒を打ち替えるなど、何かしらの秩序を持った手順が相当するでしょう。
馬鋸、あぶり出し、立体曲詰などもここに該当するでしょうか。
② 混成 Composition
・限定打
・限定合
「手の選択性」と解釈しました。
打ち場所や合駒の種類などに複数の候補があるけど正解は一つというパターンです。
攻め方あるいは受け方の指し手に駒を成るか成らないかの選択肢があるときも該当するでしょうか。
③ 抽象化 Abstraction
④ 普遍化 Generalization
⑤ 安定化 Stabilization
・吊るし桂
詰め上がり図における玉の周りの空間的広さ、つまり「玉の解放感」と解釈しました。
この指標は小山らの研究によって示唆されたものです。
詰め上がり図に限らず、任意の局面においても適用できそうな指標です。
⑥ 機能 Function
・邪魔駒消去(現在型)
・開き王手
・両王手
・打歩詰(現在型&勢力過剰型)
「駒の機能性」と解釈しました。
開き王手や両王手の場合は線駒(飛角香)の利きが別の駒で遮られていますが、その駒を移動させることで機能するようになります。
邪魔駒消去(現在型)や打歩詰(現在型&勢力過剰型)は、攻め方の駒が機能していない典型例でしょう。
⑦ 評価 Evaluation
・金頭の桂
・飛筋消角、角筋消飛
・香頭の打捨て
・邪魔駒(将来型)
・焦点の捨駒
・打歩詰(将来型)
「局面評価の変化」と解釈しました。
駒損は指し将棋の局面評価に用いられるので、一時的に損をする捨駒系(金頭の桂、飛筋消角、角筋消飛、香頭の打捨て、焦点の捨駒)はここに分類されると思います。
指した手が後に悪手の評価に変わるという意味で、邪魔駒(将来型)・打歩詰(将来型)もここに分類しました。
⑧ 相関関係 Co-relation
⑨ 共存 Co-existence
⑩ 共変動 Co-variation
⑪ 反対 Opposition
⑫ 因果関係 Causation
3.詰将棋の「面白さ」
以上のように、頻出の詰手筋を抽象化していくと、
① 手順の規則性
② 手の選択性
③ 玉の解放感
④ 駒の機能性
⑤ 局面評価の変化
といったキーワードが浮かび上がってきました。
やや言葉遊びな感じが強いですが、詰将棋を作るときの切り口として使えなくもなさそうという気はします。
というわけで、今回は詰将棋の「面白さ」について考察してみました。