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(Kindle小説紹介・試し読みあり) シェアハウスに咲く夢 : 四角関係が紡ぐ恋と人生の選択
明月文庫の小説「シェアハウスに咲く夢 : 四角関係が紡ぐ恋と人生の選択」の紹介です。Kindleから購入可能です。Amazon Kindle Unlimited ご利用者様なら無料で読めます。
(紹介)
家賃を抑えるために東京のシェアハウスへ飛び込んだ花咲結衣(はなさき・ゆい)。そこには、フリーランスのデザイナー、会社勤めのOL、夜勤をこなすミステリアスな住人など、個性豊かな男女が暮らしていました。
最初は「住居費を抑えたい」という割り切った目的のはずが、共同生活の中で距離感や想いが交差し、いつしか“四角関係”に発展していく――。
互いの秘密や夢が交錯するたびに、友情や恋が揺れ動き、将来への不安と希望が入り混じるシェアハウス。ときには衝突しつつも、誰かと一緒にいられる温かさに支えられながら、結衣は“本当に進むべき道”を模索していきます。
◆読みどころ◆
都会の片隅で繰り広げられる恋愛模様:性格や境遇が異なる男女がひとつ屋根の下で暮らすからこそ生まれる、ときめきやすれ違い。
さまざまな夢を追う若者たち:仕事・学業・アートなど、それぞれの夢と現実の狭間で悩む姿が等身大に描かれます。
笑いと涙が詰まった群像劇:コミカルな会話やドタバタ劇の裏側に秘められた、登場人物の切実な想いが胸を打ちます。
読後感は前向き&ほっこり:人生の選択に迷うすべての人へ、勇気をくれるような結末を目指しました。
大人の恋、友情、そして夢への挑戦が複雑に絡み合いながらも、読後に心が温まる前向きな群像劇。あなたも「風の庭」で起こる人間模様に飛び込んでみませんか?
(試し読み)
第一話 新生活、そして出会い
玄関ドアを開けた瞬間、都会の湿った空気が花咲結衣(はなさき・ゆい)の頬を撫でた。まだ朝の七時過ぎだというのに、アスファルトが発する熱気がどこか重苦しい。ビルが立ち並ぶ駅前の喧騒を背にして、大きなキャリーバッグを引きずる彼女の表情は期待と不安が入り混じっているようだった。
結衣は二十歳になったばかり。地元の小さな町を出て、東京の専門学校に通うために上京してきた。東京には大学に進学した幼なじみもいるが、彼女たちはすでに別の下宿やアパートを見つけていた。結衣は自分の夢を叶えるため、少しでも生活費を浮かせたいという思いから、インターネットの募集を見てシェアハウスへ入居することに決めたのだ。
そのシェアハウスは、最寄り駅から歩いて十五分ほどの住宅街の一角にあるという。東京の中心部に比べればまだ家賃は手頃らしいが、それでも地元と比べればかなり割高だ。とはいえ一人暮らしのアパートよりは安く、何より共同生活で刺激をもらいながら都会のリズムに慣れていきたい。そんな思いもあって、思い切って見学に来たその日に入居を即決した。
キャリーバッグの車輪が、あちこちの段差に引っかかりながら、ようやく目的の建物にたどり着く。白い三階建ての一軒家が、マンションに囲まれるようにしてひっそりと建っていた。玄関扉の隣には「シェアハウス 風の庭」と小さく表札が掛かっている。玄関先には小さなポーチと、緑色の折りたたみ自転車が一台止められていた。
扉を開けようとインターホンを押すと、ほどなくして中から慌ただしい足音が聞こえてくる。鍵を外す金属音がして、少しだけ古びた木製のドアが開いた。
「どうぞ、あ、今日から入居の花咲さんですよね? はじめまして、私はこのシェアハウスの管理人代理をしている松田(まつだ)と申します」
出迎えてくれたのは四十代くらいの細身の女性だった。髪を短くまとめ、眼鏡の奥で穏やかな眼差しを向けている。服装はシンプルだが、小奇麗なシャツとパンツをきちんと着こなしているところから、几帳面そうな印象を受けた。
「はじめまして、花咲です。本日からお世話になります。よろしくお願いします」
結衣は緊張をほぐすように深くお辞儀をする。都会のシェアハウスとはいえ、やはり知らない人々との共同生活が始まるのだ。内心ドキドキせずにはいられない。
「どうぞ中へ。荷物は重そうですね。先にお部屋に運んで落ち着いてからで大丈夫ですよ」
松田に促され、結衣は靴を脱いで上がる。玄関スペースは思ったより広く、住人の靴が整然と並べられていた。個性豊かなサンダルやスニーカー、仕事用のパンプスらしきものなどが目につく。みんな、それぞれの生活をここで送っているのだと思うと少し不思議な気持ちになる。
廊下の奥にはリビングへと続く扉があり、その先から人の話し声やテレビの音がかすかに聞こえてくる。朝から誰かが起きているのだろうか。平日の朝だというのに、なぜか活気があるようだ。
「本当はみんなに紹介したいところですけど、皆さんそれぞれ出勤前の準備をしてる時間帯ですからね。あとで改めて顔合わせをしましょう。まずはお部屋へどうぞ」
松田は明るく笑い、結衣を二階へ案内した。階段を上がると四つのドアが並んでいて、そのうちの一室が結衣の部屋だという。部屋に入ると、予想よりは少し狭いものの、日当たりのいい窓と小さなクローゼットがあり、壁紙の白が清潔感を漂わせていた。
「ここが花咲さんのお部屋です。鍵は個室ごとにありますから安心してくださいね。ルールの説明はリビングでまとめてしますので、荷物をひとまず置いて落ち着いたらいらして下さい」
松田がそう言い残して部屋を出て行くと、結衣はほっと息をつき、床に腰を下ろした。大きな窓から朝の光が差し込み、まだ家具のない部屋を眩しく照らしている。これから始まる新生活に一抹の不安を抱えながらも、結衣はここで夢を掴むんだと心に決めた。
* * *
部屋の鍵をかけ、廊下を抜けて階段を降りると、リビングの扉が半開きになっていた。中を覗くと、すでに何人かがテーブルを囲んでいるようだ。コーヒーの香りが漂い、テレビから朝のニュースの音声が聞こえてくる。
「おはようございます。えっと、今日から入居する花咲結衣です」
勇気を出して声をかけると、三つの視線が一斉に結衣を捉えた。キッチンの前でフライパンを握っていた男性が、手を止めて振り返る。少し長めの髪をラフにまとめた姿が印象的だ。
「お、やっと来たんだね。俺は青木陸(あおき・りく)。よろしく。卵焼き作ってるんだけど、花咲さんも食べる?」
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