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ワープとゲームと時間泥棒の話

ここ最近、「時間が溶ける」とか「時間を溶かす」という表現をよく目にするようになった。どちらとも、言い得て妙である。時間が瞬く間に過ぎ去り、意識とその対象物が渾然一体となっている感じが伝わってくる。どうやら関西方面の方言らしいが、定かではないので、興味を持たれた方は検索してみてほしい。

ただ、私の場合は、「ワープ」という表現の方がより自分の感覚に近い気する。時間が三段飛ばしぐらいで進んでしまい、時計を見て、ぎょっとする。

転職活動も絶賛停滞しており、気分転換をしようと思い立ち、久しぶりにゲームソフトを買った。スクウェア・エニックスより発売された『タクティクスオウガ リボーン』というシミュレーションRPGのゲームである。

わたしはもともと反射神経、運動神経が必要とされるゲームが好きではない。コマンドを選択中に、敵から攻撃されたりするスピード勝負系のゲームは避けている。このゲームは自分のターンのとき、ゆっくりできるからよい。

ただ、ゲームって、タスクを与えられ作業、タスクを与えられ作業の繰り返しで、ゲームの中でも何らかの仕事をしている感がある。名作と呼ばれているRPGの『クロノトリガー』や『ファイナルファンタジー』シリーズを大人になってプレイしたときに「やらされている感が半端ない」と思ったことを強く覚えている。子どものときは、とても楽しく、自主的に冒険しているようなつもりでいた。労働を知った大人になってからだと、ゲーム内の指示の多さに驚く。それにうんざりしてしまい、RPGには手を出さないことを心に決めた。ちょっと興味を持ったRPGは、Youtubeでプレイ動画のダイジェストを見るだけでも、意外と満足感が得られる。

牧場やレストランを経営したりするゲームは、現実ではあり得ないほどのスピードで事業拡大ができ、達成感が得られ、あの疑似体験はなかなか面白い。『ピクミン』シリーズも好きなのだが、あれも冷静に考えると運搬系お仕事ゲームである。

そういえば、一時期『レストランパニック』というブラウザゲームにもハマっていたな、と思い出し、検索したら、まだあった。

ゲームなんてものは、しょせん「時間泥棒」である。ひたすらゲーム内で作業をさせられているうちに時間が経ってしまう。現代は可処分時間の奪い合いの時代らしいが、また集中力を削ぐものを増やしてしまったと反省している。しかし、ゲームの世界に頭を持っていかれ、何も考えず、悩まない状態というのは、快楽でもあることを久々に思い出した。「忘我」の状態は、とても気持ちがいい。自分の身体を忘れて、意識だけの世界に入ってしまう。30分だけやろうと思っていたのに、いつのまにやら、2時間が過ぎているなんてことがゲームにハマると頻発する。しかし、まあ、ある程度、やり込んだら、どうせ飽きるのだから、そんなに心配する必要もない。

ただ、今朝起きたとき、「これはまずいかも!」と思ってしまったのも事実である。やはり、可処分時間だらけの子ども時代とはわけが違うのだ。時間泥棒に遭遇したというよりは、わたしの場合、むしろ、自ら時間という財産を差し出してしまっている。気を付けよう。でも、自意識や自我から解き放たれ、何も考えないって本当に楽なのだ。その誘惑に負けないようにしたい。

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佐藤芽衣
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