セルフネグレクトに陥らないために
わたしは通勤電車の中で、ぼんやりしていることが多い。朝は眠いし、帰りの電車は疲労により何かを考えることが難しかったりする。
人間観察という言葉はあまり好きではないのだが、服やカバン、靴は自然と目に入ってくる。
しっかりした革のカバンに、しわ一つないスーツ、パリッとしたシャツを着ているサラリーマンの靴がくたびれていることは、まずない。そういう人は、たいてい指輪をしている。誰かからケアをされていることがよくわかる。「自分でやっているよ!」と言う人もいると思うが、自分で自分に手入れをする時間があること自体、ある程度の余裕を示している。
一方で、全部ボロボロの人もいる。ナイロンバッグの型は崩れ、ズボンは毛玉だらけ、シャツはしわだらけで、靴には泥がついていたりする。そういう人はたいてい指輪をしていない。
正直、女性で服装の乱れが明らかな人はそれほど多くない。ただ、ピカピカで完璧といった風な人も滅多にいない。女性に求められている身なりの水準は高く、セルフケアが習慣化されているということもあるのだろう。女性はそれなりに整っている人がほとんどだ。
服装で一目瞭然となるセルフケアが面倒に感じたとたん、坂道を転げ落ちることになることは、なんとなくわかる。わたしも、ときどき、部屋着で外に出てしまうことがある。だらしない格好でも平気というよりは、面倒くささが先立ち、人に注意を払うこともしたくない、といった感じだ。
メンタルヘルスのケアで一番大事なのは「セルフケア」だと言われている。自分自身をいたわることで、メンタルダウンを未然に防ぐことができる。こういうことって、ちゃんと小学生のうちから教えてほしいな、と思う。生活の破綻は、寝癖を直さないとか、そういうちょっとしたことから始まるのだろうから。
冷静に考えれば「自分」を生きているのに「自分」を粗末に扱う「自分」はとても不思議だ。