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jobtagを使って自己理解を深めよう
はじめに
10月から11月にかけていくつかの場所でキャリアの講座を催しました。
昨年から荒川区街の図書館「なにかし堂」さんで極小の講座を開催しています。タイトルを「親子のためのキャリアカウンセリング入門」として、主に中高生やその保護者を対象に、キャリアの理論や情報活用、カウンセリングなどの基礎的な知識や技能をお話しして、将来設計に役立ていただく講座でした。
その中でも、役に立ったと反響のあったjobtagの職業興味検査を活用した自己理解の講座をあちらこちらでお話ししたのです。2月には本校のPTAでも実施します。
講座は、次の3回でした。
10月26日(土)荒川区街の図書館「なにかし堂」なにかし対話
11月16日(土)江戸川区高等学校PTA研修セミナー
11月23日(土)荒川区社会福祉協議会「親サポ」
その時の内容のうちjobtagの活用の部分を文章にまとめました。
多くの方にご参考頂き、高校生の将来設計に役立てれば幸いです。
1.夢と現実のミスマッチ
皆さんは小さいころから「夢は何ですか」「夢に向かって努力し実現しよう」と言われてきました。
しかし、注意が必要なのは、夢イコール職業ではないことです。
たとえば、理学療法士という職業になりたい人がいます。
私は将来理学療法士になりたいです。そのために○○大学の理学療法学部に進学し、国家試験を受け、就職試験を受け…
となるはずですが、実際には、
大学に入れず、アヤしい専門学校へ行ってしまうとか、
国家試験に受からず、就職ができないとか、
空きポストがなく、就職ができないとか
実際に理学療法士になるのは大変です。
下手をすると無職の道へまっしぐらです。
職業を決めたのに、途中で挫折してしまうと、職業選びからやり直さないとならず、面倒くさいことになります。
大切なのは夢の要素
小さいころから「夢は何ですか」「夢に向かって努力し実現しよう」と言われてきましたが、夢イコール職業ではありません。
実際には大学卒業後のほとんどの人は「会社員」という職業に就きます。これ夢でしょうか?ちょっと違うでしょう。
ということは夢が職業でない人が多くいるということです。
そもそも、人生の設計は決め打ちではありません。ゴールを決めてそれに向かっていくものでもありません。
100%理想どおりということはないし、100%でなければダメということでもない。
人生は多少の選択ミスや多少の不具合とうまくやって適応していくことです。
大切なのは夢の要素です。
理学療法士になりたいという夢の「要素」
例えば、理学療法士になりたいという夢の「要素」は
「対人能力を活かし、人々に奉仕したい」という要素でなりたいと思っている場合と
「データを取ったり、分析をしたりして自分の知性を活かしたい」という要素でなりたいと思っている場合があります。
あるいは「機械操作や身体技術などを活かした職人になりたい」という要素でなりたいと思っている場合もあります。
もしその人が「人に奉仕したい」という要素を夢見ているなら、
実は看護師も、教師も、保育士も、民間企業の販売の仕事も、その他の対面サービスもみな人に奉仕したいという要素があります。
もしその人が「データを取ったり、分析をしたりして自分の知性を活かしたい」という要素を夢見ているなら、
大学教授も、薬剤師も、研究機関の研究員も、民間企業の研究部門も、その他の研究職もみな研究者のような要素があります。
もしその人が「機械操作や身体技術などを活かした職人になりたい」という要素を夢見ているなら、
電気工事士、機械製造技術者も、調理師も、交通機関の運転手も、その他の職人的な仕事もみな職人的な要素があります。
夢の要素に向けて将来像を考える
職業名から計画するのではなく、夢の要素へ向けて将来像を志せば、実際に就職する職業が多少違っても「人に奉仕したい」とか「データを取ったり、分析をしたりして自分の知性を活かしたい」とか「機械操作や身体技術などを活かした職人になりたい」とかいった夢はかなうのです。
夢の要素に向けて将来像を考える、この考え方は「職業選択理論」を基にしています。
職業選択理論でわかるのは広い意味での仕事などの生産的な行動に対する興味・関心です。
ですから、職業領域だけでなく学問にも有効であることが分かっています。
あとで、学問の方向性についても考えていきます。
この理論は国際標準の理論で、日本でもハローワークでは必ずこの考えに基づいてテスト(アセスメントといいます)を実施します。
それが、中高生向けの「職業レディネステスト」、大学生向けの「職業興味検査」です。
これから皆さんで実施するjobtagは「職業レディネステスト」の質問項目を使った簡易テストです。
2. jobtagを使おう
それではこれからスマートホンを使ってjobtagに入り、回答していきます。
jobtagの職業興味検査を実施して、結果と本稿を合わせてみてみましょう。
jobtagの職業興味検査
説明に従って進めていけばいいのですが、念のため簡単に流れを説明します。
まず、後で示すQRコードを読み取って職業興味検査を開きます。
「この検査では、あなたの職業興味の特徴を調べることができます。質問に答えると、興味のプロフィールが示されます。」と書かれています。
下にスクロールして進みます。
「興味に関する診断テスト」とあり、その下に説明があります。
「直感的に答えましょう」とありますが、少し大げさに好き嫌いを表現したほうがプロフィールがくっきりします。
その下に問いがあります。
問いは1番から42番までその仕事の内容が書かれていて「やりたい」「やりたくない」「どちらともいえない」の三択で答えます。
やり終わったら「検査結果を見る」へ進んでください。
最後に「あなたの特徴」が出ます。
「プロフィールのうち、上から順に得点が高かった領域を見ると…」と書かれていてあなたへのコメントが示されます。
「PDFをダウンロードする」を選び「結果レポート」まで進みます。
この棒グラフは上から順に
「機械や物を対象とする具体的で実際的な仕事や活動が好き」
「研究や調査のような研究的、探索的な仕事や活動が好き」
「音楽美術文学等を対象とするような仕事や活動が好き」
「人と接したり人に奉仕したりする仕事や活動が好き」
「企画立案したり組織の運営や経営等の仕事や活動が好き」
「定まった方式や規則習慣を重視したりそれに従って行うような仕事や活動が好き」
となっています。
結果レポートの棒グラフを六角形のチャートにします。
![](https://assets.st-note.com/img/1734221704-dMKtqOz94TpBviEug1r6hYNU.png?width=1200)
スコアは2桁コンマ小数点以下2桁です。この数字を六角形のチャートに落とします。
3.職業選択理論(ホランドの理論)
皆さんの六角形を解説するために、理論について少しお話します。
Will Can Must
自己理解といいますが、あなたの何を理解するのでしょうか。
それはよくWill Can Mustで説明されます。
![](https://assets.st-note.com/img/1734221774-xU37koX5sav6KtAQ8BIYDMH9.png?width=1200)
自分がやりたいことはつまり興味・関心です。何が好きか、どんなことが学びたいかとか。
自分のやれることは能力。何ができるか、学力は偏差値は模試の点数はなどです。
自分のやるべきことは価値観です。親が大学に行けというけど自分は専門学校がいいと思うとか、信念とか、プロアクティブな決定とかが価値観ですね。
今日の職業興味検査でわかるのは「興味・関心」です。
ですから、この検査の結果、研究者に向いているとわかっても、能力や価値観が一致しないと興味・関心だけでなれるわけではありません。
さて、この職業選択理論ですが、ジョン・L・ホランド(John Lewis Holland 1919 - 2008)という人の説です。
ジョン・ホランドは、アメリカの心理学者であり、ジョンズ・ホプキンス大学の名誉教授だった人です。
そこでこの理論をホランド理論とも言います。
今では世界中で利用されている国際標準の理論です。
日本でも、ハローワークはこの理論に基づいて職業あっせんをしていますし、キャリアコンサルタントの人たちもこの理論を使ってコンサルをします。
ではどんな理論か。
ホランドは、人間のパーソナリティを6つのタイプに分類し、職業環境も同じく6つのタイプに分類しました。
そして、人は自分のパーソナリティに合致した職業環境を選択することで人は自分のパーソナリティを最も発揮できると考えました。
職業選択理論でわかるのは広い意味での仕事などの生産的な行動に対する興味・関心です。
ですから、職業領域だけでなく学問にも有効であることが分かっています。
■理論の概要
本理論は、次に示すようなシンプルな考えから出発し、それらについて検討を重ねた結果から生まれたものである。第1に、人の特徴は6っのパーソナリティ・タイプとの類似度によって説明できる。6つのパーソナリティ・タイプとは、現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、そして慣習的である。あるタイプとの類似度が高いほど、人はそのタイプと関連した性格的特性や行動を示しやすい。第2に、人が生活し、働く環境の特徴は、6つの環境モデルとの類似度によって説明できる。6つの環境モデルとは、現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、そして慣習的である。第3に、人と環境との組み合わせによって得られる結果を予測し、理解するために、パーソナリティ・タイプと環境モデルについての知識を活用することができる。人と環境との組み合わせの結果生じるものとして、職業選択、職業的安定性と業績、教育に関する選択と達成度、実力、社会的行動パターン、影響の受けやすさといったものが挙げられる。
本理論は、次に示す4つの作業仮定を核として成り立っている。それらの仮定は、パーソナリティ・タイプと環境モデルの本質、タイプとモデルがどのようにして決定されるか、タイプとモデルがどのように相互作用して職業的、教育的、社会的諸現象を生みだすかを説明するものである。
1 私たちの文化圏において、大多数の人は、現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的の6つのパーソナリティ・タイプのうちの1つに分類される。
2 現実的、研究的、芸術的、社会的、企業的、慣習的という6つの環境モデルがある。
3 人は、自分の持っている技能や能力が生かされ、価値観や態度を表現でき、自分の納得できる役割や課題を引き受けさせてくれるような環境を求める。
4 人の行動は、パーソナリティと環境との相互作用によって決定される。
ホランドタイプの解説
この6つのタイプは次の通りです。各タイプの、説明をしますので、聞いてください。
Rタイプは(Realistic Type)「機械や物を対象とする具体的で実際的な仕事や活動が好き」なタイプ
「R」の高い人は一言で言うと「職人タイプ」です。目の前にある現実的な「もの」が好きで、それを作ったり操作したりすることに熱中します。たとえば、プラモデルを作ったり、車を運転したり、機械を操作したりするのが好きです。
Iタイプは(Investigative Type)「研究や調査のような研究的、探索的な仕事や活動が好き」なタイプ
「I」が高い人は「研究者タイプ」です。「なぜ」という論理的思考を持ち、問題が解ける喜びを知っている、本当の意味での勉強好き。データを基に論理的・客観的に物事を考えるので、いつもクールでいられます。
Aタイプは(Artistic Type)「音楽美術文学等を対象とするような仕事や活動が好き」なタイプ
「A」が高い人は「芸術家タイプ」です。感受性が高く、些細なことに傷ついたり、急に楽しくて仕方なくなったりと感情のアップダウンも激しい人です。発想力が豊かで、様々なアイディアをひらめきます。
Sタイプは(Social Type)「人と接したり人に奉仕したりする仕事や活動が好き」なタイプ
「S」が高い人は「対人タイプ」です。対人関係能力は抜群です。寂しがりやで、人が傷ついていると一緒に自分も傷つくほどのお人よしです。
Eタイプは(Enterprising Type)「企画立案したり組織の運営や経営等の仕事や活動が好き」なタイプ
「E」が高い人は「社長タイプ」です。一言で言うと負けず嫌いで、自分が中心にいないと気がすみません。先を見越して戦略的に物事を考えられるのが特徴です。
Cタイプは(Conventional Type)「定まった方式や規則習慣を重視したりそれに従って行うような仕事や活動が好き」なタイプ
「C」が高い人は、「事務タイプ」です。誇り高く、まじめで几帳面な人です。また、正義感も強く、与えられた仕事もきちんとこなし、信頼されています。
4.ガクチカを作ろう
最後にガクチカ作りをしてみます。
大学生の就職活動では面接の質問でよく「学生時代に力を入れたことをこの会社でどう生かしますか」と聞かれます。
これを省略してガクチカと言っています。
職業選択理論でわかるのは広い意味での仕事などの生産的な行動に対する興味・関心です。
ですから、職業領域だけでなく学問にも有効であることが分かっています。
これまでの理論を活用してガクチカを考えてみたいと思います。
皆さんが、大学や就職の面接で必ず聞かれるのは「あなたは高校時代にどのような活動をしてどのような成果を上げてそれをここでどのように活かしますか」という質問です。
大学生の就活でも、大学での成果をどう活かすか聞かれますし
大人になって転職するときも前職での成果をこの会社でどう活かしますかと聞かれます。
保育士になりたい人と情報工学部に進みたい人のガクチカを考えてみましょう
では、保育士になりたい人と情報工学部に進みたい人はどんな回答をすればいいでしょうか。
考えてみましょう。
まず、この人のホランドタイプは何だと思いますか。
そうするとこの人の興味・関心が分かりますから、きっと高校時代に何をやっているか想像がつきます。
そして、おそらくそれが進学就職につながってくると思います。
ではまず自分の考えをまとめ、グループで話し合ってみましょう。
正解があるわけではありませんが、キャリアコンサルタントの立場ではきっとこんなことを答えられるようにアドバイスすると思います。
保育士になりたい人は、きっと典型的なSタイプで
そうすると
・保育実習をしている
・保育関係の科目をとっている
・行事の時に人のお世話をしている
・人の役に立つボランティアもしている
・探究で保育テーマの論文を作成している
ということになると思います。
これは、保育士になるために活かせますよね。
同じように、情報工学部に入りたい人はきっと典型的なCタイプで
そうすると
・情報系の検定や資格をとっている
・情報関係の科目をとっている
・行事の時に会計や集計をしている
・パソコン部に入っている
・探究で情報テーマの論文を作成している
でしょうね、これなら入試の面接のとき活かせますね。
おわりに
皆さんも、jobtagの結果をうまく活用して、選択科目を選んだり、検定をとったり、行事で将来につながるような活躍をしたり、進路に活かせるように学校生活を充実させましょうね。
参考文献
参考文献は次の通りです。
労働政策研究・研修機構 2006 職業レディネス・テスト[第3版]手引き
労働政策研究・研修機構 2007 中学生、高校生の職業レディネスの発達—職業レディネス・テスト標準化調査の分析を通して—労働政策研究報告書No.87
労働政策研究・研修機構 2012 VRTカード事例集—VRTカードの活用と実戦に向けて—
John L.Holland 2013ホランドの職業選択理論—パーソナリティと働く環境— 渡辺三枝子・松本純平・道谷理里英共訳 雇用問題研究会