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より良いデザインのための4つの視点

問題の観察者ではなく、存在の立ち現れ方の解読者になるために…

より良いデザインのための4つの視点

デザインの現場で、特に新規事業やプロダクト開発において、私たちはユーザーの行動をどのように理解し、解釈すればよいのか。デザインリサーチの視点を考えてみました。


1. デザインリサーチ:存在の立ち現れ方を解読する

従来、リサーチャーは「問題の観察者」として位置づけられてきました。しかし、より本質的な理解のためには、「存在の立ち現れ方の解読者」としての役割が求められているのではないでしょうか。

これは、ユーザーが無意識のうちに行っている行動が、どのような瞬間に意識化されるのか、その変化の瞬間を捉える視点です。例えば、スムーズに操作していたアプリで突然躊躇する瞬間、その「つまずき」は何を意味するのでしょうか。

この理解を深めるために、体験の4層構造を提案してみたいと思います

体験の4層構造

ここで、体験を理解するための枠組みとして、以下の4層構造がありそうだなと考えています。

  1. Physical Experience Layer(物理的体験層)
    指の動きや姿勢
    触覚的フィードバック
    直接的な身体との関わり

  2. Functional Experience Layer(機能的体験層)
    機能の利用
    タスクの実行
    操作の結果

  3. Meaningful Experience Layer(意味的体験層)
    目的の達成
    価値の実現
    個人的な意味づけ

  4. Social Experience Layer(社会的体験層)
    人間関係の構築
    コミュニティへの参加
    文化的な文脈

この4層構造は、メルロ=ポンティの身体性(corporéité)の概念や技術現象学からヒントを得ていますが、実践的な観点から再解釈を試みたものです。

2.ユーザー課題とソリューション:手許性から考える

このような体験の層を理解する上で、重要な概念の一つが「手許性」(てもとせい)です。道具が意識されないほど自然に使える状態を指していると言う理解で書いています。

例えば、絵を描いているときにクレヨンの存在を意識しない、というような状態です。デジタルプロダクトにおいても、この「意識されない自然さ」は重要な指標となるのではないでしょうか。

存在の立ち現れ方の階層性

興味深いことに、製品やサービスに問題が生じた時、その「存在の立ち現れ方」にも階層性があります:

  • UI層:ボタンやレイアウトの認識

  • 機能層:特定の機能の役割の意識化

  • アプリケーション層:サービス全体の把握

  • デバイス層:物理的な制約の認識

リサーチャーは、ユーザーの「つまずき」がどの層で発生しているのかを見極め、適切な解決策を提案する必要があります。

3. デザインとリサーチの関連性:分析から創造へ

体験の4層構造と手許性の理解は、具体的な課題解決につながります。例えば:

  • 物理的体験層での手許性の欠如は、UIの改善に

  • 機能的体験層での躓きは、フロー設計の見直しに

  • 意味的体験層での違和感は、コアバリューの再考に

  • 社会的体験層での断絶は、サービス全体の再構築に

しかし、優れたデザインは単なる「問題解決」を超えて、体験の豊かさを生み出す必要があります。ここでPlayfulExperience(遊戯的体験)という階層を超えた横断的な視点が重要になると感じています。

PlayfulExperience(遊戯的体験)

  • 機能的な目的を超えた遊び心

  • 予期せぬ発見や喜び

  • 創造的な使用の可能性

良いデザインとは、問題解決と体験の豊かさが統合された状態なのかもしれません。

4. 職種の越境:新しいリサーチャー像

このような多層的な理解は、必然的に職種の越境を要求します。リサーチャーには

  • デザイナーとしての視点

  • プロダクトマネージャーとしての考え

  • エンジニアとの対話

  • ビジネス要件の理解

といった多様な役割が求められます。
これは単なる「ジェネラリスト」を意味するのではなく、異なる専門性を統合し、より豊かな体験を創造するための必要条件と考えられます。

おわりに

まだ試論の段階です。特に体験の4層構造については、より詳細な検討や、実践での検証が必要でしょう。また、現象学的なアプローチをデジタルプロダクトのデザインにどのように適用していけるか、まずは自分自身学ぶ必要があるなぁと感じています。

皆様のご意見やご経験をお聞かせいただければ幸いです。

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