last love letter

虚しい、と思ってしまった。
沢山笑って沢山話してすごく楽しかったのに。
それでも虚しさを拭いきれなかった。

たった数時間で何万もするような場所。
そこはそれだけの価値のある楽しい場なのか。
それだけの対価に見合う待遇があるのか。

とても懐かしくて大好きな人に会えた。
たまたまだったからもう会うことはないかもしれない。
それでもやっぱり嬉しかった。
それと同時に悲しくもなった。

私はあの時のことを全て覚えているのに。
向こうは私のことなんて覚えていなかった。

けれどもう一度話しかけてくれた。
初めて会った時のように。
私ではなく一人の女性として。

それが嬉しくて悲しかった。

この人の成長を見守りたい、と思った彼は
今とても忙しそうで充実しているように見えた。
でもその彼は昔の彼と違う目をしていた。

疲れきっていて光の灯らない死んだ目。
ありがとうよりごめんねが増えた。

ありがとうって抱きついてきてくれた彼は
もうそこにはいなかった。

軽々しい言葉なんて決して口にしなかったのに。
純粋で真面目で優しく弱い彼は消えてしまった。

一つのことだけを真っ直ぐに見つめる強い彼がいた。
その目にきっともう私は映っていない。

私はそれを喜べばいいのだろうか。
強くなった彼を褒めればいいのだろうか。
それとも変わってしまった彼を責めればいいのだろうか。

私が彼を忘れてしまえばいいのだろうか。

真面目すぎるくらいに真っ直ぐな彼が
羨ましくて頼もしくて少し怖かった。
時々見る冷たい目が恐ろしかった。

笑顔が減ったな、と思った。
一度は愛した人なのに。
遠くに行ってしまったような気がした。

ただただ悲しくて涙が溢れそうになった。
泣きたくても泣けないのに。

会いたい人に会うのにお金が要る世界。
そこに少しの情も愛もないと気付いた。
仕方のないことだけれど。

その世界の住人の本質を知ってしまったから。
本当のあの人を少しでも見てしまったから。

どうしようもなく愛してる。
その気持ちが何年経っても消えない傷跡のように
目立たないけれど確かに私の中に存在している。

スキとキライの狭間で愛が疼く。
やっぱり君がいいなんて思ってしまう。

そのぬくもりと笑顔が他の人のものになってしまわないでくれと願ってしまう。
そしていつまでも幸せな君でいてほしいと強く思う。
それがたとえ私のいない世界だとしても。

これを愛と呼ばずに何と云う。

私は君を愛してるよ。
その他の愛する人たちと同じように。
いや、それらよりちょびっとだけ多く。
君に私の幸運を分けられるなら迷わずそうする。

ちゃんと休みなさい。
仕事ばっかりしてちゃいけないよ。
もっと自分を大切にね。
なんだか母親みたいだけれど。
でもそれが私の願いだよ。

君が幸せならそれでいい。
出来れば私が隣りに居たかったけれど。
今の私と君とではきっと上手くいかないから。

君を愛してるからこそ私は君から離れるよ。
ちょっと遠いところから君を見守るよ。

頑張ってね。
でも休みながらね。
君はいつも少し頑張りすぎるから。
自分を一番愛してあげてね。

君を愛してる私から
私を愛してない君へ

最後の愛の言葉。



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