愛じゃないけど好きなのよ

なにこれ不味っ。
久しぶりに吸った煙草は不味かった。

いつもと違うコンビニに
いつもの銘柄が置いてなくて
昔の煙草を買ってみた。

パッケージもあの頃とは変わってて
ずっとシトラスだと思ってた味は
実はレモン味だった。

ファーストキスはレモン味
なんてよくいうけど
苦くてちっとも甘酸っぱくなくて
でもやっぱり懐かしくて
気付いたらもう半分も残ってなくて。

何本か吸ううちに慣れちゃって
けれどあの頃と同じ味ではなくて
味覚が変わったのかななんて思ったり。

煙草を吸うきっかけなんて
かっこいいからとか
周りが吸ってるからとか
そんなのがほとんどだろう。
若気の至りってやつかしら。

私はなんでだったかな。
ああ、そうだ。
ただ吸いたくなったんだ。

煙草なんて臭いだけ。
そんなふうに思ってたのにな。

ある日ふと煙草が吸いたくて
そのまま煙草とライターを買いに行って
買い物に行く途中歩きながら火をつけた。

最初はもちろんむせた。
美味しいとは思わなかった。
でもなんとなく落ち着いた。

夜寝る前に一本。
バイトの帰り道に一本。
友達と遊んでるときに一本。

そのくらいだった。
週に1箱買うかどうか。

それが今はどうよ。
1日1箱吸うかどうか。
酷い時は半日で4箱。
お酒を飲んでる時は吸いすぎる。

あとでいっつも後悔するんだ。
いま煙草高いのにな。
吸いすぎて下がピリピリする。
もっと別のことにお金使えよ。

けどいっつも思うんだ。
やっぱり煙草が好きって。

吸い終わったあと口に少し残る苦さも
夜の静かな空気とスマホから流れる音楽も
ヤニで端っこが黄ばんだ人差し指の爪も
嫌いじゃない。

どの煙草も美味しいとは思わない。
いつもの銘柄だってそう。
ただ吸いたいだけ。

煙草を吸わなくたってイライラしたりしない。
吸わない日だってあるし我慢もできる。
けどないとなんだか落ち着かない。

煙草とお酒どっちかやめるとしたら
私はきっとお酒を選ぶ。

お酒も大好きだけれど
飲んだって酔わないし
味が好きなだけだから
ノンアルコールでいい

喫煙者に優しくない世の中だから
お店はたいてい禁煙だし
吸えても電子煙草だけとか。

私は紙巻きが好きなんだけどな。
電子煙草は気持ち悪くなっちゃう。

吸うのはいつもメンソールの煙草。
りんご味のがお気に入り。
あんま見かけないけど。

特に理由はないけどずっと8ミリ。
りんご味の8ミリはそんなに置いてない。
だから見つけるとちょっと嬉しいの。

近所の煙草屋さんのおばちゃんが
私がいつも買うのを覚えてくれてて
これ、今日も2箱?
寒いから早く帰りなさいね
なんて話しかけてくれるのが楽しみ。

もし私が煙草を吸わない人だったら
喫煙者をちょっと嫌いになっただろう。
煙草臭いし、体に悪いし。

でも煙草を吸うかどうかってだけで
その人自体を決めつけるのは
あまりにも勿体無いことじゃないかと思う。

喫煙者ならではの会話もあるし
煙草のおかげで打ち解けられる人もいる。

タバコミュニケーション
って結構便利なんじゃないかしら。

もちろん煙草がダメな人もいるし
副流煙があるから気は遣うし
最低限のマナーは守るべきもの。

けど煙草自体が悪いかっていうと
そんなことはないと思うのよね。

私は煙草好きだなあ。

愛煙家とはまた違うけど
煙草のある生活とない生活なら
ある方がいいかな。

メリットとデメリットとか
明確な理由だとか
そんなものはない。
好きなものは好き。
吸いたいから吸うだけ。

いつか辞めるときが来るかもしれない。
でも今は辞めるつもりはない。

煙草の匂いで思い出す人や景色があるから。
それも含めて好きだから。

私にとっての音楽と煙草は
カフェオレみたいな感じ。

ミルクとコーヒーなんて
白と黒で
甘いのと苦いので
かけ離れてるように見えるのに
混ぜたらとっても美味しいの。

それぞれ別のものだけど
一緒になると魅力が増す気がするの。
その魅力に気付いてしまったら
もうそれが当たり前になってしまうの。

夜が似合う音楽と
薄闇で小さく赤く燃える煙草。

エモい、って言葉は普段使わないけど
使うとしたらこういうのに言いたい。

だらだらと書いてて気付いたのは
思ってた以上に私は煙草が好きってこと。

けどやっぱりなんとなく
愛煙家とは言えないから
好煙家とでも言っておこう。



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