ちりつも
私は凄く焦っていた。
もう家を出なければ行けない時間なのに。
あと何個詰めるんだっけ。
あれ、卵焼き作るの忘れてた。
あの箱だけご飯多いな。
これ春巻き1個少ないな。
混ぜご飯どこに置いたっけ。
私は実家でお弁当を作っていた。
これは現実じゃない。
でも私はそんなこと気にしていない。
とにかくお弁当を作らなければ。
あの子たちのお昼ご飯がなくなってしまう。
時計は7:56を指している。
自分も学校に遅れてしまう。
急がなければ。
ママも手伝って。
ほら、早く早く。
そんなところで目が覚めた。
まだお弁当出来てないのに。
届けてないのに。
何故か凄くリアルで不思議な夢だった。
いつもの特別で非日常な夢じゃない。
まるで日常の1ページ。
だからなんだ。
私の日常はここにある。
いつも通り目が覚めて1日が始まる。
なのに覚えている。
妙にはっきりと。
普段はすぐに忘れるのに。
夢に私の1日が邪魔される。
それは嫌だ。
夢は特別だけど私の生活とは別だ。
無関係なものに思考を邪魔される。
凄く無駄な時間を過ごしている気がする。
嫌だけど仕方ない。
リアルな夢もある意味特別だ。
これはこれで良しとしよう。
どうせ私の1日なんて無駄な時間ばかりだ。
良く言えば悠々自適。
悪く言えばぐうたら。だらだら。
後悔したくない。
時間を無駄にしたくない。
そう思ってはいる。
ただ、何から始めたらいいかわからない。
身体が動かない。
思考回路がショートする。
なんて言い訳だ。
毎日少しずつでも何かしよう。
できるときにコツコツと。
塵も積もればなんとやら。
さあ今日は何をしようか。
せっかく早起きしたんだ。
3つくらいは頑張ろう。
荷物の発送をする。
洋服たちを片付ける。
買い物に行っておでんを作る。
よしこれで夜ご飯も決まった。
元気があれば少し筋トレもしよう。
やっぱり腹回りの肉が気になる。
汗をかいたらビールが飲みたくなった。
ちょっとだけお菓子も食べちゃおう。
こうして脂肪が溜まっていく。
塵も積もればなんとやら。
そうやってまた1日が過ぎていく。
かれこれ1年経っていた。
実家のありがたみが分かるようになった。
地元があることが嬉しいと思った。
帰れる場所があることに安心した。
自分の欠点に沢山気づいた。
ママが間違いだらけではないこともわかった。
思い出が生きる糧になる。
それなりに幸せな人生だった。
これからはお前だけだぞ。
自分次第でどうとでもなるんだ。
もっと不幸になるか。
幸せな人生だったと死ぬか。
全部自分の行動に懸かっている。
お前はどうする?
かといっていきなり人生は変わらない。
なにもしなければずっとこのままだ。
突然大金は手に入らない。
ある日急に超絶美女にはならない。
菓子食って酒飲んでたらずっと痩せない。
そんなのは夢の中ですらそうそうない。
異世界転生でもしろ。
変わりたいなら。
幸せになりたいなら。
動け。
どんなに些細なことでもいい。
全て一気にやらなくてもいい。
だから行動しろ。
小さなことから少しずつ。
塵も積もればなんとやら。