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映画感想008「秋刀魚の味」~小津安二郎の味
世界の小津安二郎の遺作、『秋刀魚の味 ニューデジタルリマスター版』を観た。
観たいと思いつつ、なかなか見る一歩が踏み出せなかった作品。
ほら、小津作品ってどれも同じ、、、と思ってしまうじゃないですか。
違うんですよ、見たら本当は全然違うし、どれも面白いはず。
『生まれてはみたけれど』、『おはよう』は好きです。
めちゃくちゃ好きです。
ただ、笠智衆作品はどれも、父と娘のホームドラマなイメージが先行して
観たら絶対おもしろいけど、他の監督作品を先に見ようと
思ってしまい。
どうしても後回し、、先送り、、ウォッチリストには
ずっとある。。。
その筆頭が『秋刀魚の味』だった!!
そして、、見た。。。
終わっての第一声は「秋刀魚が出てこない!」だった。
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僕は秋刀魚が好きなので、秋刀魚の食べ方で人それぞれの個性を
表現しちゃったりするのかなと勝手に想像を膨らませていた。
背中側から食べる人。
お腹から食べる人。
内臓を残す人。
大根おろしと一緒に食べる人。
ドカベンの岩鬼みたいにまるごと骨までバリバリ食べる人。
秋刀魚をくわえて逃げるどら猫。
などなど、秋刀魚を中心に話が繰り広げられる。。。
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なんて思っていた。
しかし。
秋刀魚は出てこなかった。。。
すみません。未見の方。
秋刀魚は出てきません。
でも、笠智衆は相変わらず「だにー」と言っていたし。
みんな、ちょっとを「ちょいと」と言うし。
挨拶だって「コンチハ」だし。
杉村春子もいつも通り怪訝な顔をしてたし。
カメラもローアングルもローアングルだった。
めちゃくちゃ小津安二郎の『味』が濃ゆい。。。
笠智衆と中村伸郎と北竜二の掛け合いが
音楽のようにテンポが良くて
ワンショットの切り替えしと
引きのグループショットの編集が本当に気持ちい!
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そう、このリズム良いテンポが本当に気持ちい
脳内で何かがドバドバでます!
話は変わって、、
途中の
笠智衆と戦争で同じ海軍だった加東大介が
バーで軍艦マーチを流して行進するシーン(43mあたり)
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笠智衆の息子役の和夫が
俺にも好きな人いるぜ!
バスの車掌さんだよ
ちいせんだ、太ってんだ、かわいいんだ
とニヤケながら言うシーン(1h13mあたり)
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この2つのシーンは最高なので
是非、繰り返し繰り返し見て欲しい。
そして、そして
既視感はあるが、娘が嫁いでいき
父の笠智衆がひとり寂しく家で佇んで
映画は終わる。。
人生はひとりぼっち。
そんな寂しさを味わう。
旨いが少しほろ苦い。
何とも言えないが味わい深い。
それも人生か。。。
これは、、
そう、、
秋刀魚の味、、そのものではないか!
そして、これこそ
小津安二郎の味か!!!
小津安二郎の遺作は
小津安二郎の味をふんだんに楽しめる
味わい豊かな作品だった。
涙。。。
最後に
娘役の岩下志麻が美し過ぎて
度肝抜かれました!
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おわり