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フォンテインズD.C.について

◯久々に出会った衝撃。

フォンティンズDCというバンドがある。
このバンドは、アイルランド出身のバンドでポストパンクの新星と言われ、いまやその代表と言われている。
そして、そのバンドが出した最新アルバム『Skinty Fia』がキャリア初となる全英チャート1位を獲得した。音楽メディアも大絶賛の新作だ。
『Skinty Fia』を聴いてみたが、いやこりゃすごい。不穏なボーカルに合わせた不穏なバックサウンド、ボーカル、ギター、ドラム、ベースだけのシンプルな響きに久々に衝撃を受けるほどのサウンドだ。
いわゆるオルタナティブな強引な響きや、UKロックのようなメロディアスな感じでもない、「不穏」な響きなのだ。
最近は、この「不穏」な響きが、音楽で表現されることが多い。
特にビリーアイリッシュのようなものすごい低音をベースにした若者の不安定さを表現した響きに代表されるが、その不穏さとはまた違う、国家的な不穏、歴史的な不穏さを感じる響きなのだ。音楽ファンならぜひこのアルバムはチェックしてほしい。


◯アイルランド人の苦悩

フォンティンズDCはアイルランド人の苦悩について表現していると言われる。
この不穏な音楽を聴く限り、その表現はとても成功しているように思われる。
アイルランドは、イギリスの植民地化からの分割、カトリック・プロテスタントとの対立問題など歴史的に複雑な問題を抱えている。1960年代から続くテロや紛争、北アイルランドの領土問題やイギリスとの関係をU2が憤りを感じて謳ったように、フォンティンズDCもまた、現代のアイルランド人の苦悩について表現している。それがこのサウンドに反映されているのだろう。イギリスのバンドでは、おそらくレディオヘッドに代表される不安定なサウンドを一歩進めたものだ。
少なくとも、現代のロックやパンクでは表現しきれなかったサウンドをフォンティンズDCは表現している。

◯ロックの可能性

「ロックンロールは死んだ」と言われて久しい。
現在の音楽シーンの潮流は電子音楽だし、生で楽器を鳴らすことの古めかしさは
あるかもしれない。
しかし、人間の苦悩を表現する際に、その人間が鳴らす音楽はおそらく生でないと伝わらないものがあるはずだ。そうしたことをフォンティンズDCはまた思い出させてくれるバンドだ。

◯フジロック2022へ出演

フォンティンズDCは、今年の夏のフジロックに初来日で出演する。これはコロナで中止になった2020年のフジロックへのリベンジだ(2020年に出演予定だった)。
今、ノリに乗っているフォンティンズDCのフジロックでのライブは、おそらく今年の目玉のアクトになるだろう。きっと次に出演する時はヘッドライナーになっているはずだから。その姿をぜひ目撃してほしいと思う(もちろん僕も行く)。



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