賞味期限の決め方
こんにちは、お菓子屋meguriです。
30代未経験から、実店舗を持たず独学で菓子製造をしています。
今回は賞味期限の決め方を話したいと思います。
1.消費期限と賞味期限の違いは?
消費期限
安全に食べられる期間。消費期限を超えると安全ではなくなる可能性がありるので、食べることはおすすめできないです。
賞味期限
美味しさの品質が保たれる期間。未開封かつ包装等に書かれている保存方法を守っている場合、賞味期限を越えたからといって、すぐに安全性に問題があるとは限らないです。
2. 焼き菓子の消費期限・賞味期限の考え方
消費・賞味期限は、食品関連事業者の責任で決定することが食品衛生法により定められています。
つまり、食品関連事業者の個人的な主観や経験のみで設定することはできず、試験を行うことが推奨されます。
また焼き菓子の種類によって消費期限・賞味期限が変わってきます。
砂糖の配合によっても消費期限・賞味期限が変わってきます。
水分活性
食中毒や腐敗に関わる微生物は、その活動に利用できる水分(自由水)が少なくなると死滅、増殖できなくなり、人間の健康に危害を与えない水準以下に抑えることができます。
食品中の水分は食品成分と結合した“結合水”と、微生物が利用可能な結合していない“自由水”とから成っています。
お菓子に含まれる水分1に対して自由水の割合を水分活性と言います、微生物が利用できる水が少ない≒水分活性が低いほど微生物は活動できなくなります。
菓子の水分量と水分活性
3. 砂糖の配合による水分活性
砂糖が持っている特徴的な性質のひとつが水に溶けやすいということ。(親水性)
食材にしみ込んだ砂糖は自由水と結合して結合水へと変化するため、微生物が利用できなくなります。
このような働きにより、砂糖は食品を腐りにくくしているのです。
大部分の細菌は水分活性が0.90以下になると、防腐効果があるといわれています。砂糖では58.4%以上必要ということになります。
結構使わないと防腐効果ないじゃないの!!
例としてジャムの砂糖濃度は62%程度とされています。
この場合、水分活性は0.89となり、かろうじて酵母の繁殖が防げる程度のようです。
ですが、砂糖と水分が結びつく役割はかわらないので、食品の防腐効果を考えると、焼き菓子を作っていく上で砂糖の使用量を減らすことがいい、とは言い切れないですね。
その際は賞味期限の見直しなど必要かと思います。
似て非なるもの 塩と砂糖のQ & A〈塩と砂糖の機能〉より引用
4. 焼き菓子の消費期限・賞味期限の設定
設定に至るステップ
①目指す消費期限・賞味期限を設定する
設定したい消費期限・賞味期限を目安で決めます。砂糖を控えたなら、いつもより短い消費期限・賞味期限にすることも検討が必要ですね。
最初はネットでクッキーならクッキーの目安で書かれている賞味期限を参考にしました。
クッキーは1ヶ月ほどもつと記載されているものが多かったので、最初の設定として賞味期限を1ヶ月(30日)としました。
②鮮度保持剤の仕様有無、パッケージを決める
クッキーなどではよく見かけますが、マフィンなど賞味期限が短く設定してあるものやパンなどは鮮度乾燥剤をしようしていないものも見かけます。
また使用する袋も、シーラーなどで密封せず、そのまま入れておりテープで止めているものもあります。
そのような簡易的な梱包の場合、賞味期限の設定が最初から短い想定となっていますね。
長期的に鮮度を保って販売したい場合は、焼き菓子に合わせて密封した菓子用袋に乾燥剤や脱酸素剤を入れて密封するようになります。
乾燥剤・脱酸素剤についての決め方はこちらの記事を参考にしてください☺︎
③焼き菓子の生産量や日程を想定した製造方法を検討
忙しい時やマルシェなどで大量に生産する必要がある場合、何日か前より製造し、保存する必要が出てきます。日持ちがしにくい焼き菓子の場合は、製造日より数えて賞味期限の設定となるため、自分が作れる量を把握しておく必要があります。
以前のマフィン屋さんでの食中毒事件がありましたが、賞味期限との兼ね合いと保存日数が計算できていなかったために発生してしまったと思っています。
賞味期限も考慮した自分の作れる量、保存方法をきちんと把握しておくことが必要であると感じます。
④第三者機関での検査
②③の条件で製造し、梱包した焼き菓子を検査します。
期限を設定する指標となる試験は
微生物試験・理化学試験
官能試験
があります。
・微生物試験・理化学試験
想定した期間で、微生物の増殖や化学的な変化を数値で確認し、安全性について評価します。
厚生労働省ホームページにて検査機関の一覧もありますので、参考にしてください。
私はこちらの機関で検査していただきました。
「食品微生物センター」
流れとしては
⒈WEBで必要な入力をして申請
保管温度なども記入する部分があるので迷いましたが、常温(室温)を選択しました。
検査内容は基本セット(一般生菌・大腸菌群・大腸菌)があり、そこに増やす検査などあれば増やすシステム。
クッキーはカビが心配という情報も入手していたので、真菌も検査してもらうことにしました。
黄色ブドウ球もよく調べる検査ですが、梱包するまで手袋をしているので今回はつけませんでした。
⒉電話がかかってきたので保管日程や検査内容の確認などを話す
この時に不安な部分を聞くと、丁寧に話してくれました。保存方法も常温でいいとの回答をしてくれたので安心。
⒊言われた個数を発送
30日の期間の賞味期限の検査をしたいので、安全指数(決めた期間×1.25(安全係数0.8)=保存期間)を計算した38日間の保管をします。届いた初日、10日おき、最終日の検査で一種類につき合計5個のクッキーを送りました。
場所によっては検査に必要なグラム数が異なると思います。私は、ダメ元でクッキー4枚を一つの袋に入れて販売することを話すと、その状態のものを5つ送ってくださいと話してくれました。その状態のグラム数も伝えたかな?
やさしい〜〜〜。
機関に相談して決めることをおすすめします。
こちらの機関は送料も負担してくれたので嬉しいポイント。
⒋検査ごとの結果を郵便、メールで届けてくれる
検査のたびに問題がなかったか、最終的に安全指数をかけて何日の賞味期限設定が問題ありませんなど伝えてくれます。
⒌気になる値段
気になりますよね、、、
私は3種類のクッキーを5つずつ発送し、5回(届いた初日、10日目、20日目、30日目、38日目)検査していただきました。
ここの機関は10検体以上で割引(1検体につき500円くらい)してくれていました。
初回検査
単価4,050×3検体=12,150
合計¥13,365(税込)
10・30日検査(真菌検査なし)
単価1,950×6検体=11,700
20日検査(真菌込み)
単価4,050×3検体=12,150
合計¥26,235(税込)
38日検査(真菌込み)
単価4,050×3検体=12,150
合計¥13,365(税込)
今回の検査でかかった合計金額が¥52,965となりました!!
わ〜〜〜!な金額ですよね。
でも、検査してなくて何かあった場合を考えると、安全をとる方が自分の身を守るためにもいいのかなと思います。
また、保存期間分結果が出る期間がかかるため早めに提出し、検査してもらうことをおすすめします。販売開始の日程がずれ込んでしまいますからね。
・官能検査
おいしさや品質の劣化を判定するための指標。
実際に食べてみて食感や風味など美味しく食べられるか人の五感(目、耳、鼻、舌、皮膚)を使って品質を評価・判定する方法です。
作ったお菓子の保存日数ごとに食べてみておいしいかどうか確認します。
5. 焼き菓子の消費期限・賞味期限の決定
以上の検査機関での微生物検査によって算出した賞味期限と、官能検査で実際に食べてみて、美味しく食べられる賞味期限をすり合わせ、決定していきます。
6. まとめ
いかがだったでしょうか。賞味期限ひとつとってもなかなか奥深いですよね。
たくさん作りたいと思う一心で、賞味期限の設定があやふやになってしまうと元も子もないです。安全に、おいしく食べてもらえるように心がけていきたいですね。
こちらの記事が参考になると嬉しいです!!
最後まで見ていただきありがとうございました。
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