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【検証】中村悠平が「ホームランを打たれた次の打席、初球に同じ球種を選択する」は本当か?

はじめに

順調にキャンプ日程が進んでいる今日この頃ですが、自分はインフルエンザで一週間離脱して超スロースタートになりました。
暁めぐりです。

今回はスワローズの正捕手、中村悠平のお話です。
タイトルにある通りですが、ムーチョが「ある打者にホームランを打たれた後、その打者の次の打席の初球に打たれた球と同じ球種を選択する」というのはある程度認識されていることだと思います。ストレートをホームランにされたら、その打者の次の打席の初球はストレート、という感じですね。

誰が言い始めたかは分かりませんが、昨シーズンの中継において里崎智也氏も言及していたと記憶しています。解説者のなかでもある程度認識されているようです。
そこで、今回はこの法則がどの程度あてはまるのか検証し、そこから見えてくるムーチョのリードの一端を考察考えたいと思います。
今季の試合を見る際の楽しみの一つになると思いますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

※記事に何かあればこちらまで
暁めぐり@燕党新人Vtuber(@Meguri_Akatsuki)さん / X (twitter.com)


1.検証

検証方法と条件

検証の前にいくつか前提条件があるのでご紹介。
①ホームランを打った打者が交代していないこと(当たり前)
②捕手が交代していないこと(該当する事例なし…多分)
ホームランを打たれた投手が交代していないこと
④首振りは考慮せず

中村悠平以外の事例も考察しますが、基本的にはこの条件で。③に関してですが、左右が違ったり、持ち球が違ったりで難しいので投手が代わった場合は除いています。

検証

前半戦、後半戦に分けて見ていきます。
打たれた球種が左側の赤字で、次打席の初球を右端の列に示しています。
次打席の列は赤字が一致、青字が不一致を示しています
まずは前半戦です。

2023前半戦 中村悠平捕手時の被本塁打球種と次打席の初球

総数24件で一致したのが19回、不一致が5回。一致率は79.2%でした。特に開幕から2か月は一致率91.6%、例外1件と高い一致率を記録しています。
このあたりは後ほど。続いて後半戦。

2023後半戦 中村悠平捕手時の被本塁打球種と次打席の初球

件数16件で一致したのが9回、不一致が7回。一致率は56.3%でした。前半戦からかなり下がってますね(高橋奎二打たれすぎ…)。
特に8~9月に不一致が集中しています。このへんも後ほど。
ここまで見ても「必ず」というわけではなく、例外も多いですね。

結果

件数40件のうち一致したのは28回、不一致は12回、一致率は70.0%でした。
なんとも微妙な結果に。まあ球種が7割分かるなら高確率の気もしますが、このままだとよくわかりません。
というわけでスワローズの他の捕手と比較してみます。

他の捕手との比較

まずは内山壮真から。

2023 内山壮真捕手時の被本塁打球種と次打席の初球

件数4件のうち一致したのは1件、一致率は25%でした。2試合分しかデータがないですが、こんな感じ。

次に古賀優大

2023 古賀優大捕手時の被本塁打球種と次打席の初球

件数11件のうち一致したのは4回、不一致は7回、一致率は36.4%でした。
やはりムーチョと比べるとあまり高くないようです。

最後に松本直樹

2023 松本直樹捕手時の被本塁打球種と次打席の初球

2件どちらも一致しませんでした。2023シーズンの一軍でマスクをかぶったのはムーチョを含めてこの4人だけでした。

ここでムーチョ以外の捕手のデータをまとめてみます。
件数17件のうち一致したのは5回、不一致は12回、一致率は29.4%でした。

小結

まとめてみると
中村悠平:一致率70.0%(18/24)
他の捕手:一致率29.4%(5/17)

という結果になりました。個々の捕手を見ても、ムーチョだけが際立って次打席の初球にHRを打たれた球種を選択していることがわかりました。
比較すると、この70%がいかに高い数値かわかると思います。ムーチョが、「ホームランを打たれたボールと同じ球種を初球に選択する」ことを意図的に基本線していることは間違いないと思います。

というわけで、説立証!!!でいいかなと。

ここで終わってもいいのですが、折角なのでこの検証データをもとに色々と考察を加えたいと思います。
ここから、①時期別の推察、②状況分析、③同球種選択の効果、④投手別、の4点からホームラン後のムーチョについてみていきます。

2.時期別の球種選択変更の推察

先ほどまで見てきた通り、ムーチョがホームランを打たれたボールと同じ球種を選択する割合には前半戦、後半戦で変化がありました。
前半戦の一致率は79.2%→後半戦は56.3%であり、その中でも偏りがあったのは前述したとおり。
そこから、ある程度期間を決めてホームラン後の球種選択を行っていたのではないかという推測が可能です。あくまで推測に過ぎないのでその辺りはご留意を。

第1期(開幕~5月)

中村悠平 第1期

大体開幕から2か月の傾向です。前章で保留した一致率91.6%の期間です。これだけ連続で同じ球種をしていると、流石に意図的ですね。初めて球種を変えたのが5/31、2023シーズンの開幕は3/31なのでちょうど2か月。これも面白いですね。

第2期(6月~8月上旬)

中村悠平 第2期

こちらも6月から2か月ほどの傾向。一致率は72.2%と平均と同じくらいに。少しずつ一致しないケースが増えていきます。
第2期の終わりは8/3。2023シーズンの最終戦は(結果的に)10/4なのでこれも大体2か月前です。

第3期(8月上旬~9/14)

中村悠平 第3期

そして8月上旬から、突如として一致しないケースが続きます。切り取り方だ、と言われてしまえばそれまでですが。もちろん一致率は0%
そしてこの傾向が終わる9/14というのは、2023年のスワローズにとっても、重要な日付でした。
そう、クライマックスシリーズ進出の可能性が消滅し、セ・リーグ三連覇の夢が潰えた日です。

この日を境にまた傾向が変わります。

第4期(9/20~10/4)

中村悠平 第4期

CS消滅後の9月中旬以降、第1期と同じような傾向に。一致率は100%です。以上、ムーチョのホームラン後の初球でシーズンを分割していきましたが、これを「シーズン戦略」として解釈することはできるでしょうか。

小結

ムーチョのホームラン後の対応をまとめると、以下のようなシーズン戦略の仮説を想像することができます。すなわち

第1期:開幕から2か月、初球に打たれたボールを選択し続け、エサを蒔く
第2期:期を見て一致しないケースを増やす
第3期:シーズンラスト2か月の大事な時期に基本線をガラッと変える
第4期:消化試合になったので基本線を戻す

といった、シーズン終盤にブーストをかける戦略が…「あったといえなくもない」くらいでしょうね。
データとして傾向が見えるのは間違いありませんが、どうしてこのようなデータを残すに至ったか、についてはムーチョのみぞ知るところですから。
ムーチョが引退してYoutubeかなんかやってたら聞いてみたいですね。その前にコーチでいてほしいですが。

3.状況分析

ムーチョのホームラン後の基本線が、「初球に打たれたボール」というのは大丈夫だと思います。
では、その選択を変更するシチュエーションに傾向はあるのか?というのが本章の目的になります。
ムーチョが初球の基本線を変えたのは、前述した第1期唯一の例外となった市川に要求したシュートと、第2期の5回、第3期全体の6件でした。これらの計12件のシチュエーションを見ていきます。

第1期、2期

①第1期
5/14:2アウトランナーなし
②第2期
6/8  :1アウトランナーなし
6/14:0アウトランナーなし
6/30:0アウトランナーなし
7/17:2アウトランナーなし
8/2  :2アウトランナー1塁

最後の8/2だけランナーがいますが、基本的にはランナーなしのシチュエーション。8/2も含めてプレッシャーの比較的ない、試せる状況で選択を変更しています。では第3期をみてみます。

第3期

8/8  :0アウトランナー1塁
8/17:2アウトランナーなし
8/26:0アウトランナー1、2塁
8/29:0アウトランナーなし
9/12:1アウトランナー2、3塁
9/14:2アウトランナー2塁

全面的に基本線を変えている第3期にはピンチの場面でも選択を変えています。少なくとも、8月中旬~9月中旬の基本線の変更の連続は、状況の違いがもたらした偶然ではないようです。言い換えれば、ピンチでも一貫して打たれた球種から入らなかったとも言えます。

ところで、仮説として、終盤戦のブーストのための基本線変更、みたいな話をしましたが、この変更に効果はあるんでしょうか。
そもそも基本線として、「ホームランを打たれたあと、その打者の次の打席の初球に、打たれた球種を選択する」選択と、それを変えることに何か効果があるのでしょうか。
次章ではホームラン後の初球への反応と、当該打席の結果をみることでその効果を見ていきます。

4.被本塁打後の球種連続・変更効果

本章では、「ホームランを打たれたあと、その打者の次の打席の初球に、打たれた球種を選択する」選択とその変更の効果についてみていきます。
まずは、初球に対する反応から。

初球反応に関する効果

ここでは、ホームランを打った相手打者が、直後の打席の初球に対してどのような反応をしたかを分析します。
打たれた球種を選択した場合と球種を変更した場合について、ムーチョとそれ以外の捕手で分けて見てみます。

2023スワローズ 初球反応に関する効果

これ以降、1項目ずつのデータ件数が少なくなっているので要注意。本当は数年単位で件数を増やすべきですが、手元にデータがありませんのでご容赦ください。
さて、これを見ると、中村悠平が被弾した球種を次打席の初球に選択した場合には、カウント取得率(ストライク/ファウル/空振りの合計)及びストライク見逃し率が高くなっています。7割はホームランを打った球種が来るにも関わらず、です。
有意なデータかどうかはともかく、分かっていたとしても絞らせないというのは、ムーチョによる駆け引きの結果といえるかもしれません。

被本塁打の次打席の被打率

はい、このnoteで最も因果関係が怪しい節になります。
すなわち、「被本塁打後の初球の選択によってその打席の被打率は変化するのか」という話です。
データと名のついた別の何かなのでサラっと見るだけにします。

2023スワローズ 被本塁打の次の打席の初球と結果

アウトの中に村上のエラーが2つ含まれていますが、関係ないのでアウト扱いに。
表によればムーチョの場合は球種を変更したほうが被打率が下がる、という結果が見えます。ただ、ムーチョ以外だとその限りではないようです。
ムーチョの場合は7割の基本線があるからこそ変更したときの効果が大きいのかもしれません。逆に、被本塁打の球種と次打席初球の一致率が3割に満たない他の捕手陣では、一致させたときの被打率が下がっています。

この辺りでやめておきます。が、ムーチョが球種変更をした場合に被打率が本当に下がっているとすれば、時期別分析における第3期に大きく傾向を変える意図や効果があると言えるのかもしれません。しらんけど

5.投手別

最後に、投手別に被本塁打後の初球の選択を変えているかどうかを見て終わりにしたいと思います。以下、いずれもムーチョ捕手時の一致率です。

  • 小川泰弘:100%(6/6) ※第3期データ対象なし

  • サイスニード:50%(4/8) ※不一致は第2期に2、第3期に2回

  • 高橋奎二:78.6%(11/14) ※不一致は第2期に2、第3期に1回

  • 石川雅規:80%(4/5) ※不一致は第3期に1回

  • ピーターズ:33.3%(1/3) ※不一致は第2期に2、第3期に2回

難しいです。
制球力の高い石川、小川の2人は例外が少なく、いずれも第2期には不一致はありません(対象データはあります)。逆にいえば、第3期には石川登板時にも選択を変えていたことになります。この辺りは時期別分析の傍証に…なるかもしれません。
サイスニード、高橋奎二、ピーターズに関しては第2期に不一致の例があります。この辺りは投手によって変えていた可能性はありますね。

結論

さて、ここまでムーチョの被本塁打の次打席の初球について、様々な角度で考察を加えてみました。
結論としては「基本線:打たれた球種、というのは間違いなく、その選択にもまた、いろいろな要素がある」くらいでしょうか。
あまりデータが豊富なわけではないので怪しい部分が多いというのが正直なところですが、ムーチョが色々なことを考えながら対応しているというのは見えてきたと思います。
まあホームランは打たれないに越したことはないですが、狭い神宮を本拠地とするスワローズならではの楽しみでもあると思います。
来季も注目してみていきたいですね。

おわりに(次回予告)

ここまで、長文にお付き合いいただきありがとうございました。リハビリの一環で軽めの題材を…とおもったら5500字を超えていました。どうして…

次回ですが、少し開幕から逆算して執筆していくことになりそうです。昨季と練習試合・オープン戦の結果から、ヤンスワの現在地を探るnoteは間違いなく作ると思います。
+αとして開幕候補第1位である小川泰弘の1年経ったワンシームと、おそらく開幕後の初勝利の日に奥川恭伸のnoteを出すと思います(不確定期限)。
長岡についてはヤンスワ回でまとめてやることになりそうです。

いよいよオープン戦が始まり、開幕が待ち遠しい時期になってきました。
このワクワクがシーズンに入っても、長く続くことを祈って。

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