聖者の余韻
世の中には“聖者”と呼ばれる人がいます。修行などを経ていわゆる“悟り”に至った人に与えられる称号であり、日本人だとヨグマタこと相川圭子さんが有名です。
わたしは今まで聖者にお会いする機会はなかったのですが、このたびシュリシュリ・ラヴィ・シャンカールさん(以下シュリシュリさん)が来日されるということで講演会に参加してきました。テーマは『瞑想が導く幸せな人生の秘訣』。
(HPからお借りしました)
100名以上入る会場は満席。日本人はもちろん、インド人やアメリカ人など多国籍な顔ぶれで賑わっていました。講演の模様はオンラインで世界中に中継されるそうで、シュリシュリさんの影響力のすごさを思い知らされます。
シュリシュリさんはインド出身の男性で、4歳で聖典『バガヴァッド・ギーター』を暗唱し、周囲から「神童だ」と騒がれたそう。氏が1981年に創設した「アートオブリビング」は「一人一人の心と体のストレスを取り除き、ストレスと暴力のない社会を作り出す」という理念のもと、世界中でヨガや瞑想、呼吸法を指導。ボランティアとして人道支援も積極的に行っているそうです。
意外とステージに近い席に座れたので、聖者の表情を肉眼で見られる期待に胸が踊ったのですが、思いがけず接近チャンスが訪れました。なんと、シュリシュリさんが客席を通ってステージへ上がるということで、通路側の席だったわたしは匂いをかげそうな距離で聖者とまみえることに・・・!
シュリシュリさんが姿を現わすと会場には拍手がわき起こり、みな笑顔をたたえ、手を差し出したり、スマホを向けたり(これはちょっとわたしは抵抗があったのだけど)。わたしも一瞬、目を見てほほえんでいただいたのですが、ダルシャンで感極まって泣いてしまう方々の気持ちがわかりました・・・。あの存在と1分くらい見つめあう機会があれば、わたしも泣くと思う。
会場には、ゲストとして衆議院議員の下村博文さん(ヨガを推奨されているんですって)や俳優・画家・ヨギーの片岡鶴太郎さんもいらしていました。鶴ちゃんのスピーチは芸人らしくちょこちょこ笑いもあったのですが、すっかりおなじみとなった鶴ちゃんの朝のルーティンの話になり、「(ヨガや瞑想、食事に時間がかかるため)家を出るまでに7時間かかるんです」という言葉にシュリシュリさんは苦笑い。しかし、「ヨガや瞑想から一日を始めることが、心の豊かさにつながっている」という鶴ちゃんの言葉には、実体験が教えてくれる真理が垣間見えていて、共感しきりでした。
シュリシュリさんいわく、やはりヨガや瞑想を習慣づけるには最初はルーティンに組み込むことが必要になりますが、慣れてくるとそのうち体が自分の意思を覚え、気づきが維持できるようになるそうです。「たとえば食事も、食べなくても平気になるし、食べ過ぎてもちゃんと消化できるようになる」とのこと。やはり意志がすべてを決めているのかもしれません。
シュリシュリさん自身も世界中をまわって活動されているので、「旅をする間はルーティンが続けられないから、フレキシブルでいる必要がある」という実感があるそう。聖者といえど私たちと近しい概念を持っているんだなぁと感じました。
シュリシュリさんは世界を平和に導くために、呼吸や瞑想を用いたオリジナルのプログラムを展開されています。
「瞑想をおこなうときは、まず最初に次の三つを心で唱えてください。私は何も欲しくない。私はこれから何もしない。そして、私は何者でもない、ということです」
そして、シュリシュリさんの誘導のもと、会場のみんなで瞑想タイム。聖者の声はなんとも優しく、落ち着いていて、椅子の心地よさも手伝ってすっかりリラックス・・・。夜だったこともあってときどきカクン!と寝落ちしながら、トータル30分近く瞑想を体験しました。ヨガニードラを受けているようでした・・・(そして記憶がほぼありません・・・)。
シュリシュリさんがとにかくおっしゃっていたのが、「笑顔でいてください」ということ。
「眉間にしわを寄せた険しい表情をしているとき、72の筋肉が働いています。でも、ほほえんでいるときはたったの4つです。ストレスが、すべてのネガティブなものの母となります。そこから個人間や国同士の暴力へと発展していくのです。ストレスがないときは視野も広がりますし、物事をポジティブに考えられます。ですから、まずはどうぞ笑顔でいてください」
シュリシュリさんはそんなに多くは語られませんが、言葉や態度にユーモアがあり、一人の人間としてとても魅力的な方でした。ゆったりとリラックスし、落ち着いた姿勢でありながら、明晰で快活な心の在りようを思わせる。
わたしもあんな存在になりたいなぁ・・・ただそこにいるだけで、人々を平和にできるような・・・なんて思いをほのかに抱きながら、聖者と同じ空間を全身で楽しませていただきました。
そんな聖者の余韻に浸りながら、今日もまだいい気持ち。「波動が高いほど、振動が細かい」ってことが、なんだか体で感じられて良かったです。いつか、インドのアートオブリビングにも行ってみたいなぁ(パンフレットを見ると、楽園のようだよ)。