千早茜「男ともだち」
関係しないということはつまり、
終わらないってことなのだ。
物語はいつ男と女に針が振れてもおかしくない危うさを孕みながら進んでいく。
でもこれはただの”男ともだち”の物語なんかではないと私は解釈している。
世の中はいつも分かりやすい関係性で括りたがる。
「あの人とあの人はどういう間柄なわけ?」
という問いにいつも答えを探し出す。
でも、曖昧な関係というものが存在する。
曖昧にもかかわらず、
なんだか分かり合えてしまえるような動物的な本能というか
その人にしかわからない感覚を呼び起こしてしまう出会いや
時を経た再会というものが唐突にやってくることがある。
自分を孤独から救ってくれるのが、必ずしも家族や恋人や友達とは限らない。
名付けられないような関係性が自分を絶望のどん底からすくい上げてくれたり、片時の心の拠り所になったりもする。
つかず離れず、ふわふわ漂う。
いや、意図してそうなったわけではないのだけれども
感受性や考え方の作法がとてもよく似てしまっている、理解者同士。
その心地よさを私も知っている。
遠い記憶。
もう、掴めないけれども、いつまでもわたしの中を漂う、甘美な記憶。
男ともだち。
そんなものが簡単に見つかっても困るけれども、
だけれども、
そんじょそこらには転がっていないだけで
それは確かに、存在する。
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