【3分でわかる】『Cloud クラウド』レビュー
あらすじ
主人公の吉井は小さな工場で働きながら、転売屋としても日銭を稼ぐ毎日を送っていました。
先輩から教えてもらって始めた転売屋は、思ったよりも地味で根気のいる作業の連続で、『楽に稼ぎたい』という最初の気持ちとは相反したものでしたが、甘い儲け話には乗らずコツコツと転売を続けていた矢先。
工場長から昇進の話を持ちかけられたことをきっかけに仕事を辞め、吉井は転売屋として本格的に活動するために、郊外に愛する恋人と移り住むことを決めます。
商品の売れ行きは好調。
サポートとして佐野という地元の青年を雇い、新生活は順調かのように見えました。
しかしネット上では吉井に対するアンチがどんどん増えていき、次第にそれは吉井を捕まえて報復するという『狩りゲーム』に発展していきます。
はたして吉井は日常を取り戻すことができるのでしょうか。
続きは本作でお楽しみください。
みどころ
※一部ネタバレを含みますので、苦手な方はご注意ください。
1)『標的』になる恐怖
狩りゲームには吉井に明確な殺意を持っている人だけではなく、単なるゲーム感覚で参加している人もいます。
誰かの上に立ちたい。
誰かでストレス発散したい。
そんな歪んだ思いで参加した彼らですが、物語が進んでいくうちにいつしか狩る側から狩られる側に回ることになります。
殴っていいのは殴られる覚悟があるやつだけだ。
そんな言葉がありますが、様々な情報が行き交い誰もが標的になる可能性がある今だからこそ、そのことを忘れてはいけないなと思いました。
物語の後半からはド派手な銃撃戦がメインになります。
最後には誰が生き残るのか、ぜひ予想しながらご覧ください。
2)雲のように膨れ上がっていく憎悪
ネットで膨れ上がった憎悪によって標的にされてしまった吉井ですが、彼は決して誰かに直接危害を加えたわけではありません。
明確な悪意を持って暴言を吐いたり、誰かに暴力を振るったわけでもない。
しかし吉井の悪意のない言動は、彼の知らないところで様々な人達の心に傷をつけていました。
丹精込めて創った製品を安値で買い叩かれた店主。
転売品とは知らずに偽物を掴まされ大損したフリーター。
そして、仕事を教えていたはずがいつしか立場が逆転してしまっていた転売屋の先輩。
彼らが不幸になってしまったのは吉井のせいではありません。
しかし時に人は、どうにもならないことを誰かのせいにしたくなります。
こうなったのはあいつのせいだ。あいつが悪い。
そうやって誰かのせいにしていたほうが楽なのです。
小さな火種は気づかずに放置すれば、いつしか自分を焼き尽くす大きな炎になる、そんなことを感じた作品でした。
面白い作品だったので、気になる方はぜひ一度本作をご覧ください。