【3分でわかる】『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』レビュー
【あらすじ】
京都の美大に通う高寿(たかとし)は、ある日電車で1人の女の子に一目惚れをしました。
名前も声も知らないけれど本能的に好きだと感じた高寿は、電車を降りた女の子を咄嗟に呼び止めます。
彼女の名前は愛美(えみ)。
学校がある駅を乗り過ごしてしまったという彼女が電車を待つ間、なんてことない話をしていると、無情にも彼女が乗る予定の電車がホームに到着してしまいました。
「また明日、会えるかな」
そういう言うとなぜか愛美はぽろぽろと涙を流し、「また明日」とだけ言って電車に乗って行ってしまいました。
愛美の言葉どおり、2人は次の日も、そしてまた次の日も会うようになり、初めてのデートの帰りに高寿は愛美に告白し付き合い始めます。
交際がスタートし順調に進んでいく2人ですが、なぜか愛美はことあるごとにぽろぽろと涙を流すようになりました。
嬉しい、と微笑みながら涙を流す愛美を不思議に思いながらも、彼女の笑顔や素直さに高寿はどんどん惹かれていきますが、次第に愛美の言動におかしな点があることに気が付きます。
時折まるで未来を予知しているかのような言動をする愛美に疑問を投げかけると、彼女の口からまるで信じられない御伽話のような話が語られました。
なんと2人が住む世界は異なっていて、愛美の暮らす世界では未来から過去に時間が流れているというのです。
高寿にとっての明日は、愛美にとっての昨日。
高寿にとっての昨日は、愛美にとっての明日。
2人の世界が交わるのは5年に一度の30日間だけ。
愛美は15歳の頃、25歳の高寿から2人の未来を告げられ、その未来を叶えるために行動していたのでした。
これまでの出来事は全て未来の自分から聞いたことを実行していただけだと知った高寿は、愛美の気持ちがわからなくなり、2人で過ごす時間を素直に楽しむことができなくなってしまいます。
事実をしった高寿は今まで通り愛美のことを愛せるのでしょうか。
続きはぜひ、本作でお楽しみください。
【みどころ】
1)時を超える想い
2人は30日間という限られた時の中で、恋をします。
24時を過ぎたら魔法がとけてしまうシンデレラのように、30日後には消えてしまうと知りながら、それでも精一杯相手のことを愛し続けている姿に胸が苦しくなりました。
「どうしてきみと家族になれないんだろう」
高寿が29日目に言ったその言葉は、きっと愛美も思っていたことだと思います。
自分のことを忘れてしまうと知りながら、高寿を愛すると決めた愛美。
30日後には消えてしまうと知りながら、愛美を愛し続けると決めた高寿。
切ないけど、これほど純粋な愛はないなと感じた作品でした。
2)自分のことを忘れていく愛する人
過去から未来を生きる高寿と、未来から過去を生きる愛美。
2人に流れる時間は、同じようで全く違います。
出会って1日目から少しずつ愛を深めていって、この人しかいないと思ったタイミングで恋人が消えてしまう高寿と、出会って1日目から愛し合っていたのに、徐々に自分のことを忘れてしまう恋人を見ることになる愛美。
どちらのほうが辛いかと聞かれたら、私は愛美のほうが辛いだろうなと思いました。
どんなに最高の日を過ごしても、明日になれば恋人の記憶から今日の自分は消えてしまう。
そして、時が経つにつれて愛し合っていたことさえも忘れていってしまう。
ものすごく辛いことですが、それでも高寿と一緒にいることを選んだ愛美の愛の深さと健気さに心を動かされました。