領域を超えたつながりが、食と農の未来を明るくする 宮崎市めぐるMeet Up イベント
3月下旬、「宮崎市の食材×○○ 宮崎食材の未来を一緒に考える めぐるMeet Up イベントを開催いたしました。
三菱地所は、エコッツェリア協会とともに、2022年9月に宮崎市と「食と農に関する連携協定」を締結し、それぞれの知見を活用して食や農の活性化や、関連企業・人材育成支援などを行うことに合意し、めぐるめくプロジェクトとも連携しています。
このMeet Upイベントは、宮崎食材のさらなる販路拡大を狙って、宮崎牛や宮崎野菜の活用方法を考えるというもの。実際に調理した宮崎食材を頂きながら、PR方法や、6次産業化へ繋げるための方法などについて、食の専門家を交える交流会を実施しました。その模様をレポートします。
世界からも注目を集める宮崎の食
今回のイベントがこのタイミングで実施されたのは、2023年4月22日〜23日にかけて、G7広島サミットの関係閣僚会合のひとつである「G7宮崎農業大臣会合」が宮崎市で開催されるためです。会合の主な議題は、気候変動、新型コロナウイルス感染症、ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で世界中に起こっている食料供給や食料安全保障の問題にどう向き合うかといったことでした。一方で、G7宮崎農業大臣会合が行われることによって開催地域の食にも大きな注目が集まることから、宮崎市では宮崎県や農業関連組織など54団体と連携して推進協議会を設立し、食や農業、文化、自然など、地域の魅力を世界中に発信する活動や、G7各国の食材などを地域住民に紹介することで国際理解を深めたり、食料問題への理解を促したりといった展開をしていったそうです。
本イベントの1ヶ月後に開催された4月の会合でも、宮崎県内の高校生が考案したスイーツの提供や、県内で行われているスマート農業の視察なども実施。最終的にはG7各国の農相が共同で声明をまとめ、農業の持続可能性と生産性向上の実現、フードロスの削減、サプライチェーン多様化などを盛り込んだ「宮崎アクション」が採択されたことは広く報じられました。
食と農を通じて地域と都市の豊かな関係を構築する「めぐるめくプロジェクト」
続いてマイクを握ったのはめぐるめくプロジェクト事務局の広瀬です。
広瀬 「これまで社会が経済合理性を追求してきた結果、食産業のバリューチェーンが分断している状況になってきていると感じています。一方向だけのベクトルだと、地域のタベモノヅクリ(生産や加工)の価値が正しく伝わらなかったり、最大化されなかったりしますし、地方の生産者からは『東京に行っても買い叩かれてしまうからあまり行きたくない』と言われることもあります。食に関する付加価値を追求していくには、機能的なコミュニティだけでなく情緒的なコミュニティもあった方がいいと考えたことが、食と農に関するコミュニティ設立の構想につながっています」
このコミュニティの中では、食や農業関係者だけでなく、領域や地域の枠を超えたプレイヤーを募り、様々な知識や経験、人的ネットワークを共有していくことを標榜しています。コミュニティに属したプレイヤーたちは、地域の生産加工に関わることによってその価値向上と生産サイクルの効率化を図るギアのような役割を果たしていきたいとも言います。具体的な取り組みとしては、より多くのステークホルダーを巻き込むためのトークイベントや、新しい食の価値を創出する交流会、地域間の学び合いを生み出すフィールドツアー、地域と都市の活動・共創事例の発信イベントなどがあり、これらのプログラムを通じて地域との関係性を深めています。
「私たちはこうしたコミュニティを作っていくことで、いろいろな地域との密な関係構築を図り、各地域の課題の解像度を高めていきたいと思っています。そして、食にとどまらないプレイヤーがこの中に入ってくることができるようにして、食の価値をさらに高められるような関係性を築いていきたいのです。私の好きな言葉に『和醸良酒』という言葉があります。『皆で良いお酒を飲むと良い仲間になり、良い仲間になることでまた良いお酒が醸される』といった意味合いがありますが、やはり食とコミュニティは良い関係を作り、循環させていくものだと信じています」
食と農をめぐる地域課題解決の鍵は「6次産業化」
広瀬 「大量生産大量消費の世の中では、広告などを活用したマスマーケティングが主流でしたが、最近はこだわりを持つ消費者が増えてきているため、企業や商品に愛着を持ち信頼を寄せてくれている顧客を獲得し、その人の愛着や信頼を上げる取り組みをする流れになってきています。そうした中で、食べ物づくりに関するコミュニティも、生産地から消費地となる都市だけでなく、生産地から生産地など、多様なコミュニティにベクトルを向けて結びついていくことで、異なるファン層の獲得・拡張をしていくべきでしょう。こうした『LOCAL TO LOCAL』な取り組みのあり方を考えていくために、今回宮崎市を題材として、宮崎と他地域の産品をコラボレーションし、宮崎の魅力を発信することができればと思っています」
宮崎市東京事務所でシティセールスを担当する池袋耕人さんは、宮崎の産品を首都圏の人々に広める活動をする中で、様々な苦労や疑問を感じていたところ、このめぐるめくプロジェクトに出会ったと教えてくれました。
池袋さん「首都圏の人々に対してどれだけ『宮崎のものはどれも美味しいです』『宮崎牛は日本一です』と言っても届かないし、どうすれば生産者の方々の思いを伝えられるのか、物が売れるのかずっと迷っていました。そのような時にこのめぐるめくプロジェクトに参加することになり、広瀬さんたちと話をしていく中で、マスに向けて大きな声を出していくのではなく、生産者の考えていることや課題の解像度を上げていく方向がいいだろうと感じるようになりました。もちろん答えはひとつではありませんが、今日参加いただいた皆さんと交流を深め、一緒に作戦会議を行い、いいアイデアを出せればと思います」
そして、実際に宮崎の食材を食べながらの「作戦会議」へと移ります。この日宮崎市から提供いただいたのは、5年に1度開催される“和牛オリンピック”こと全国和牛能力共進会で、史上初めて4大会連続内閣総理大臣賞を受賞した宮崎牛、宮崎市の伝統野菜である「やまいき黒皮かぼちゃ」、宮崎を代表する柑橘類である日向夏、宮崎ブランドの完熟きんかん「たまたま」の4つです。それぞれの食材を3×3 Lab Futureのキッチン担当者が調理し、宮崎のお酒と共にいただきながら、それぞれの魅力を最大化する方法や、認知度や販路を拡大する方法などについて、参加者と宮崎市職員でディスカッションしていきました。
ディスカッションの途中には、丸の内プラチナ大学 アグリ・フードビジネスコースの講師の中村正明さんより、他地域における6次産業化の事例紹介を受け、アイデアを広げるヒントを提供してもらいました。
6次産業化は新しい付加価値を生み出し、農家や漁師といった一次産業従事者に利益をもたらすものですが、「商品を製造したけど売れない」「手間が掛かって儲からない」「地域内の連携が難しい」「地域ブランドを創出できない」「継続ができない」といった課題があります。そこで中村さんがポイントとして挙げたのが連携・協働型6次化プラットフォームの構築です。これは複数の自治体同士、あるいは企業やNPO法人、大学や高校等の教育機関などが手を携えて商品開発や地域ブランド醸成に注力していくもので、それぞれが持つ知識や技術、ノウハウを絡み合わせることでより高価値の商品やブランドを生み出すことができ、成功の可能性を高められます。
中村さん「例えば、私が所属する関東学園大学がコーディネーターとなって、群馬県太田市の生産者、飲食店、道の駅、ホテル、行政、商工会、JA、高校と連携したプラットフォームを作り、地域課題の解決と相互利益を生み出すソーシャル・ビジネスを展開しています。太田市は関東で初めてさつまいもの栽培に成功したという歴史があります。そこで、街中の空いている土地にさつまいもを植え、参加組織が協力して商品開発を行い、現在テストマーケティングに進んでいます」
その他にも、財団法人がハブとなって愛知県田原市、香川県小豆島町、東京都港区をつなぎ合わせて地域の産品を東京に展開する事例や、岩手県陸前高田市と丸の内エリアが連携して地場産品のブランド化に取り組む事例などを紹介した中村さんは、6次産業化のポイントを次のようにまとめました。
中村さん「独自のプラットフォームをきちんと作っていくことが、課題解決や地産地消の推進、食料自給率アップ、輸出拡大、就農者の増加、新しいビジネスモデルの構築につながっていくと考えています。日本の基幹産業である一次産業を再構築していくことは、地方の人口減少や流出に歯止めを掛け、関係人口の増加と地域活性化につなげていくストーリーになっていくでしょう」
ディスカッションを終えた参加者たちからは「首都圏で宮崎の食材を食べられる場所を見つけたらSNSで発信していく」「宮崎の野菜をセットにして販売していく」といったアイデアが共有されました。
美味しい食事とお酒を味わいながら意見を交わし、宴もたけなわになってきたところで、この日のイベントは終了の時間を迎えました。食と農という誰もが必要とするテーマを扱うこのセッション。今後は宮崎との関係性を深めていくのはもちろんのこと、様々な地域の課題解決と魅力の再発見に取り組んでいく予定となっています。
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イベント情報や最新の取組みについても今後更新予定です。(めぐるめくWEBサイト)