笑お-已己巳己 いこみき-
写真は飾ったままにしておいた。
幼稚園の行き帰りも、おやつを買いに行く時も、二人で歩いた浜辺。いつも少し寂しげな海の色。ゾウさん模様のビキニを着てしかめっ面をしている私と、パラソルの下で微笑む母。
我が家では恒例の、キャンプ場。どこまで見上げても深い緑。父と兄、こわばった顔をしている私と、にこにこしている母。
そういえばと、見返して思い出す。女の子らしい恰好が嫌いだったし、木々から聞こえる蝉の声が怖かった。
でも、母が笑っていたから。どんなことも包みこんで、笑って、楽しい思い出にしてくれた。北海道の短い夏。私の記憶の中では、海はきらきらしていたし、蝉だって歌っていた。
お母さん。安らかなだけの最後はちょっと寂しいから、笑顔の写真もみんなに見てもらおう。今日はとびきり辛い日になるけれど、私はお母さんそっくりの顔でめいっぱい笑って、みんなを包み込んでみせるよ。
拙い文章しか書けませんが、読んで下さったあなたに気に入っていただけたら、とても嬉しいです。