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出会った日から *袖摺*

心の中では、ずっと特別で大切な人。

実際に会ったことは、まだ一度もない。

その人は、長い髪に黒ぶち眼鏡、ひげを生やしてラフなTシャツを着ている。星光る夜空の下、わずかな時間、ベンチに座って話をするのが習慣になっていた。仕事の話や家族の話、共通の趣味であるカメラの話などをして一日を穏やかな気持ちで終える。SNS上で作り上げたキャラクター同士での交流であっても、PC越しであっても、人となりは想像できる。素敵な男性だ。

そんな毎日も、自身の生活にお互いが精一杯で疎遠になった期間が、1年以上続いた。


その日、息子が公園で遊ぶ様子をベンチに座りそっと眺めていると、メールの通知音が鳴った。世界が真っ暗で、寝ても覚めても涙が出る、そんな時期だった。

「久しぶり。元気にしてますか?」

あなたに助けてほしいと言いたかった、本当にその瞬間だった。

* * *

北海道、新千歳空港、21時。私たちの本当の袖摺まで、もう少し。

拙い文章しか書けませんが、読んで下さったあなたに気に入っていただけたら、とても嬉しいです。