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ティファニーと赤いトレーナーで迎えた19歳の誕生日の話

18歳のころ、自分のできないことをぜーんぶ両親のせいにして、ツンツンしていた。

この両親じゃなかったら「もっとキラキラした人生」だったんじゃないか?と八つ当たりの気持ちでいっぱいだった。村で育てやがって、不細工に生みやがって、...とにかく生みやがって(言葉つかいまで大嵐)。

そう、理不尽を絵に描いたらこんなんやなという18歳をやらしてもろてた。

その年は、初めて一人暮らしを始めた年。

バイトを掛け持ちして働いて、栄養学を学びに学校へ通いながら途中からは声優学校にも通いレッスン、とにかく1分1秒も惜しく動きまくっていた。友だちがデートや買い物をしていても、泥くさく働いて泥くさく学ぶ毎日。

あっというまに泥くさく(流石に泥くさすぎ)、12月の誕生日を迎えた。誕生日を迎えても何も変わらない朝にうんざりした気怠い気持ちだった。

彼氏もいないし、友達とケーキを食べるくらい。19歳の誕生日はいつもと変わらない日常だった。

荷物が届くまでは。

その日は、お気に入りの真っ赤なトミーのトレーナーに黒いスキニーパンツを履いていた。

当時はストリートに憧れ、Bガールてのになりたかったが掠りもせず、BガールどころかG(地味)ガールだった(#完全にすべったね)。

当時、お金がなくてトミーで唯一買えたのが真っ赤なトレーナーひとつだけだったのだ(いつも、ひと2人くらい入りそうなTシャツきて凌いでた)。

バイトにいく準備をしていると宅配が届いた。

母からだ...なんだろう?しばらく連絡もしてないのに...。

ブルーがトレードマークの箱。中にはメッセージとリングが入っていた。雑誌でしか見たことないアレだ。

年中反抗期な娘のために。なんでも他力本願な娘のために。親不孝の娘のために。一生懸命お小遣いを貯めて買ってくれたんだとおもう。

「生まれてきてくれてありがとう」

急いで母に電話をした。携帯は目からでる汗でびしょびしょだ。

「お母さん、ティファニーのリング届いたよ」

「お誕生日おめでとう。リングお揃いなんよ、お揃いのものが欲しくて。元気にしとる?困ったことない?」

「こんなん高かったやろ?いいのに...」

「お母さん、応援しとるからね」

9ヶ月前と変わらない高めの声、小さめの音量、控えめな喋り方。電話を切り終わったあと、母に大事にされてるんだなと思った。そう思えた。

親子の関係は難しい。どちらも理想を求め合うことがあるし、心配だからこそ親が正と押し通してしまいたくなるときもあり、子もまた、自分の失敗を親が作った環境のせいにだけしたくなる時もある。でもね、心配したり、アドバイスしたり、反抗したり双方が対等なぶつかりがあるときは...このことだけを考えてるんじゃないだろうか...。

「幸せに生きて欲しい」

うちは母に愛されてないと思っていた。その気持ちが、うまく人を愛せないことにも繋がっていたのは本当だ。

19歳の誕生日、真っ赤なトレーナーにティファニーのリングを身につけて鏡に映る自分は正真正銘、母の子だった

母に似てないと思っていた顔だけど、少し口元が似てる気がした。肌だって同じように真っ白だ。ちんちくりんな身長も、そうだ!母の手料理が一番美味しいと思ってるし味覚も一緒だ。うちは可愛いぬいぐるみは興味ないけど、動物好きは一緒だ。母と一緒の部分たくさんある。

母が大好きだから、寂しかったんだってそう気づいた。お揃いのリングを見ながら、生まれてよかったかも、わたしもう少し頑張って生きたいって、そう思えた。

「お母さんの子であんたよかったな」鏡に映る自分に声をかけて、また泥くさく働き、泥くさく学ぶ19歳がはじまった。














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