美術展が好き。 |モネ、モネ、モネ。光に溺れる美術展
先日、上野の森美術館で開催中の、「モネ 連作の情景」展に行ってきた。
「100%モネ」というキャッチコピーの通り、本企画展で展示されている作品は、初めから終わりまで、すべてモネ。
国内外各地の美術館から、モネの絵画が一堂に会する、またとない贅沢な機会だ。
このところ引っ越しで忙しく、美術館に足を運べない日々が続いていたが、「これは見逃せない!」と上野へ直行。モネは、私が最も好きな芸術家のひとりだ。
光に溺れる美術展
もし「光を描いてみて」と言われたら、あなたならどうするだろうか。
私なら、まず太陽や電球などの光源を描き、そこから線を数本引いて、光を表現するだろう。残念ながら、それしかできない。
光は、目に見えるようで、目に見えない。身近な存在ではあるけれど、いざ絵に描いてみてと言われると、はたと手が止まってしまう。
モネなら、こうする。
モネは、1872年に『印象・日の出』という作品を描き、後に世界を熱狂させる”印象派”の先駆けとなった。
印象派の画家たちは、目の前で刻々と変化する情景から得た印象を、そのままカンヴァスに描いた。
アトリエから屋外に飛び出して、彼らの目を通して見たあるがままの光と影を、作品の中に閉じ込めた。
彼らは、現実世界とは全く異なる色彩や質感で風景を描いた。モネの作品は特に創意と実験に富んでおり、観るものを光で溺れさせる。
今回「モネ 連作の情景」の作品を鑑賞し、改めてモネの色彩感覚の凄さに酔いしれた。
ピンクやブルー、パープルで朝焼けを表現することの、繊細な難しさ。それをやってのけるモネの技術。やはりモネは偉大だ。
”連作”について
本企画展のテーマである、モネの”連作”。
晩年のモネが、ジヴェルニーの庭園で「睡蓮」の連作を描いたことは有名だ。
今回は、彼がそこに至るまでの経緯や、連作に打ち込んだ理由などに焦点を当てた展示になっていた。
モネは、欧州各所を旅し、気に入ったロケーションを見つけたら、そこに留まって集中制作するスタイルを取っていた。
同じモチーフや構図で、時間をずらしながら、何枚も絵を描いた。このスタイルが、晩年の連作制作に繋がっていく。
モネが、ライフワークである連作を通じて探求したのは、「”時間”と”人間の心”の移ろいを、いかに表現するか」だと思う。
その時その時の、光のあり様、空の表情、波の揺らめき、草花の呼吸。
その一瞬を捉え、印象そのままに描く。それを何枚も繰り返し、連作として、移ろいを表現するのだ。
早朝に描く睡蓮の池と、夕刻に描く睡蓮の池では、光の表情が異なる。
同時に、絵を描く瞬間のモネの心情も、1枚ごとに異なり、それが作品に表れている。
そして、モネの作品を鑑賞する私たちの心も、1日として同じ日はないだろう。
絵画を鑑賞する行為は、こうした様々な移ろいの掛け合わせだ。
モネの連作は、この掛け合わせにより奥行きを持たせる、実験的な試みだと思う。
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